研究概要 |
本年度は、これまでに系統的に研究されている結晶構造中に酸素八面体を含むペロブスカイト関連化合物、Aurivillius型層状酸化物、Dion-Jacobson型層状化合物を探索の中心とした。これらの探索のうち、強誘電体であると同時に可視応答性の光機能を付与するため、元素選択として、前記3つの化合物群に対してAサイトにBi, Ag, Sb, BサイトにFe, W, Nb, Sb, Taを100%あるいは若干量固溶するA2WO4およびBi2BO4を含む候補物質分を選定し、合成を試みた。これらのサンプルの光吸収スペクトルの測定から光学バンドギャップを見積もると同時に、強誘電性臨界温度(Tc)を測定した。まず、Aurivillius型層状酸化物(1)Bi2WO4、(2)Bi2-2xSr1-2xTa2-xScxO9 (x = 0.05, 0.10)、(3)Bi2.15-La0.15Sr0.7Ta1.85Sc0.15O9、 (4)Bi2+2xSr1-2xNb2-xScxO9、(5)Bi2La0.5Sr0.5Nb1.75Sc0.25O9を合成した。後半の4つの系は新化合物であり、強誘電性およびリラクサー特性を示すことを確認した。(2)(3)(4)の系は、B-サイトにd0カチオンであるScを置換することで、Tcが200℃程度上昇し、しかも、Psも増加することが判明し、電気絶縁性の高いこれらの系が、実用上・応用上さらに、存在理由が高くなることが判明した(一部は学会発表、論文発表済み)。(5)の化合物はAurivillius型層状酸化物ではまれなリラクサー挙動を示すことがわかった。(1)から(5)に加えて、室温以上でTcを持ち、かつ可視光域で光吸収が大きいPb(Fe2/3W1/3)TiO3-PbTiO3系単結晶を作製し、来年度の光起電力測定用試料とした。
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