本年度は、ペロブスカイト系、タングステン系層状ペロブスカイト、及びビスマス系安タンタル石型化合物をはじめとするいくつかの狭バンドギャップ強誘電体セラミックス及び単結晶を設計・合成し光応答材料としてのポテンシャルを探った。昨年度実施した、これらのマトリックス化合物に対してイオン置換を行いバンドギャップチューニング・分極特性・ドメイン構造・絶縁性・焼結密度の制御の結果をもとに今年度は、合成したセラミックス及び単結晶試料において、光起電力・光電流・光誘起歪みを計測し光誘起効果とバンドギャップ幅・分極特性・ドメイン構造・絶縁性-粒界状態との相関を系統的に評価した。 報告されているPLZT系における異常光起電力効果と、BFOの可視光による巨大光起電力効果を参考に、狭バンドギャップ強誘電体の一つであるPb(Fe2/3W1/3)O3とPTとの固溶体に着目して伝導性を制御した強誘電体の光起電力および光電流の変化を調べた。ポーリングしたPT60%の固溶体で488nmの光を照射したところ、数百V/cmの光起電力が測定されるとともに、従来の強誘電体に比べて大きな光電流が得られた。なお、強誘電体から、キャリアドープで半導体に変化するにつれ電極との界面でショトキーバリアが形成され、その影響が無視できなくなった。得られた知見を物質設計にフィードバックすることによって、狭バンドギャップ強誘電体における革新的な光一電気・光-力学機能性の創出に対するヒントが得られた。最終的にはこれらの効果をさらに増強することで、強誘電体光触媒、光アクチュエータの開発に必要な材料に関する知見を得た。
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