従来、LiMnPO4 などのオリビン型化合物の水熱合成では、オートクレーブを用いて外部から加熱することにより合成が行われているが、この方法では昇温過程で反応容器内の温度が不均一であり、目標温度に到達するのに時間がかかる。このため、生成される粒子サイズが不均一になりやすい。また、合成に数時間程度を要する。本研究では、マイクロ波を用いてLiMnPO4 ナノ粒子の迅速合成を試みた。今回の検討で、マイクロ波を用いることで、LiMnPO4の合成を数分の反応時間で行うことが可能であることが分かった。さらに、水熱合成時に粒子生成の反応場となる水の量がLiMnPO4の粒子サイズに及ぼす影響を明らかにし、水の量が少ない(前駆体の濃度が高い)場合に、LiMnPO4の核生成頻度が高くなり、微粒子が得られることが分かった。今回の検討で、平均粒子径約60 nm程度のLiMnPO4粒子を簡便かつ迅速に合成することに成功した。 LiMnPO4は、ほぼ絶縁体であり、電気化学反応をさせるためには電極内部でLiMnPO4粒子からの集電効率を高める必要がある。本研究では、LiMnPO4粒子にカーボンコーティングを施すことにより、導電性の向上を図った。このようにして作製したLiMnPO4/C複合体を正極活物質、負極に金属リチウム、電解液に有機電解液を用いることによりコイン型電池を組み立て、LiMnPO4の電気化学特性の解析を行った。今回合成したLiMnPO4の充電・放電反応は可逆的であり、放電容量は100 mAh/g程度であった。これは、理論容量(171 mAh/g)の60%に相当する。今後、電極作製方法などを最適化し、電極の内部抵抗を低くすることにより、充放電容量の増加が期待される。
|