研究課題/領域番号 |
23655194
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
小松 高行 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (60143822)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ナノガラス粉末 / ガラス融液 / 静電噴霧法 / リチウムイオン電池 / 形態制御 |
研究概要 |
本研究は、ガラス融液へ静電噴霧法を適用することで超微細ナノガラス粉体の簡便合成法を新たに提案・確立することを目的にする。さらに、本手法がガラスの新たな形態制御手法に成りうることを実証するため、ガラス結晶化法によるリン酸系リチウムイオン二次電池用正極活物質へ本手法を適用することである。本年度得られた結果を以下に示す。(1)融液静電噴霧装置(白金るつぼの底に直径0.5mmのピンホールを開け、白金るつぼと下部のグラファイト板に高電圧をかける。白金るつぼは電気炉内にセットする)を試作し、低融点Bi2O3-B2O3系ガラス(フラジャイルな液体)をモデル融液とした場合、ファイバーが引けることが分かった。しかしながら、放電が起こることから、装置の改良が必要である。(2)電気炉でガラスを溶融するのではなく、レーザーで加熱溶融しても、液滴を作製することが可能であることを見出した。(3) 次世代リチウムイオン二次電池として注目されているリチウムリン酸系ガラス粉末(LiFePO4, Li3V2(PO4)3 など)を作製し、その結晶化挙動を高分解能電子顕微鏡等により検討した。熱処理雰囲気、遷移金属イオンの価数、粒子の表面と内部での結晶化挙動の違いなどが生成結晶と電池特性(充放電特性)に大きく影響することを明らかにした。 (4)ガラスの結晶化では、固相反応法では生成しない、熱力学的に非平衡な準安定結晶がしばしば出現する。融液を利用する本研究の特徴を活かし、これまで実験的に合成されていないスピネル型のLiFeSiO4結晶を融液の冷却で検討した。その結果、極めて高い電気伝導度を有するスピネル型のLiFeSiO4結晶が融液を冷却するだけで生成することを発見し、新たなリチウムイオン電池正極材料の可能性があることを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案した融液静電噴霧装置を試作し、基本的に、ファイバーや液滴の作製が可能であることを実証した。また、ガラスの結晶化で得られたリチウムリン酸系の結晶はリチウムイオン二次電池の正極材料として十分な性能を持つことを実証し、本研究の重要性や革新性をあらためて明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
融液静電噴霧装置における融液の作製をレーザーで行うことにより、装置の改良を検討する。この手法により、装置自体がより簡便化されると同時に、放電も抑制されることが期待できる。実際の融液には、LiFePO4組成や新たに発見したLiFeSiO4組成について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
融液静電噴霧装置の改良、白金坩堝、ガラス作製原料、資料収集や成果発表などの旅費、大学院生の実験補助費等に使用する。
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