本研究はガラス融液へ静電噴霧法を適用することで超微細ガラス粉体・ファイバ(数十~数百ナノメートル)の簡便合成法、即ち融液静電噴霧法の提案・確立とリチウムイオン伝導性ガラスへの適用を目的とする。平成23年度は電気炉内で底部に細孔をもつ白金容器にリチウム鉄リン酸ガラス融体を入れ、容器をアノードとして電界を印加したが、炉体との絶縁破壊が生じてしまい、静電噴霧現象は確認出来なかった。平成24年度は、装置の改良と融液静電噴霧法の適用可能はイオン伝導性ガラスの開拓を行った。本年度に得られた成果を以下に示す。1)融体への直接電界印加ではなくガラスと炭素の複合体を作製し、レーザー照射で先端のみを溶融し、装置の構成の改良を進め、電界印加を行った。しかしながら、静電噴霧の現象は確認されなかった。これは通常室温で起こるような水溶液の静電噴霧に比べて酸化物融液の分極率は小さく、静電噴霧を可能とするためには、より高電圧を印加する必要があり、更に材料および周辺部の絶縁性が必要であることが明らかになった。2)装置改良の一方、組成設計の観点からガラス融体の分極率を上げる目的で材料探索を行ったところ、リチウムをナトリウムに置き換えた新規ナトリウム鉄リン酸系ガラスを見出し、かつそのガラスは容易に結晶化することを明らかにした。また、得られた結晶化ガラスはナトリウムイオン電池の正極活物質として良好に動作することを実証し、レアメタルフリーの二次電池実現に有望な材料であることを提案した。3)融液静電噴霧法の適用が可能と考えられるLi2O-Fe2O3-SiO2系ガラスについて検討した。このガラスからは、ガラス融体の急冷によってのみLiFeSiO4結晶が生成する。様々なガラス組成と冷却速度に対するLiFeSiO4結晶の生成挙動を明らかにし、この結晶のリチウムイオン二次電池材料としての問題点と可能性を提案した。
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