研究課題/領域番号 |
23655199
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
細川 三郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90456806)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ソルボサーマル法 / 希土類錯体 / 希土類酸化物 / 触媒 / 蛍光材料 |
研究概要 |
希土類酸化物の最も代表的な材料として、CeO2触媒やEuドープY2O3蛍光体があり、これら生成物の微粒化および形態制御により、特異な物性を付与できると期待できる。しかし、希土類酸化物は異方性がないか、小さいため、形態を系統的に制御することは困難である。そこで、本研究ではソルボサーマル法を活用し異方性の高いオキソグリコール希土類錯体のような希土類錯体を合成し、その錯体を熱分解させることで希土類酸化物ナノ結晶に変換する合成法の確立を目指す。さらに、このような処方で合成した希土類酸化物ナノ結晶の触媒特性および蛍光特性について検討する。 今年度では、酢酸セリウムをカルボン酸を含む1,4-ブタンジオール中でソルボサーマル反応させることを検討した。その結果、層状構造を有するCe錯体が得られ、その錯体を熱分解させることで極めて表面積の高いCeO2が得られることを見出した。また、1,4-ブタンジオール中でのソルボサーマル反応において、酢酸セリウムに少量の酢酸プラセオジウムを添加させて得られたRE(OAc)O錯体とRE(OAc)2(OH)錯体の混合物を焼成して合成した触媒担体はNOの直接分解反応に対して有効に作用することも見出した。 一方、EuドープY2O3蛍光体の合成を検討する中で、酢酸イットリウムのみの1,4-ブタンジオール中でのソルボサーマル反応を行った。本処方によりY(OAc)Oが得られ、それを焼成して合成したY2(CO3)O2はEuをドープしていないにも関わらず、特異な発光特性を示すことを見出した。また、同様の特異な発光は、1,4-ブタンジオール中でのソルボサーマル反応により合成したY3Ga5O12でも観測できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の検討において、ソルボサーマル合成した希土類錯体の化学組成等がそれを熱分解させて合成した希土類酸化物の物性等に大きく影響を及ぼすことが認められた。そのため、本研究開始段階の目標は概ね達成しているものと思われる。また、希土類蛍光体の検討を進める中で、極めて特異な発光特性を示すことを見出すことができ、当初の計画以上に進展した成果を得ている。しかし、希土類錯体の形態制御という観点では系統的な結果は得られておらず、その改善に対する検討が少し遅れているもののおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
ソルボサーマル合成した希土類錯体の形態等が希土類酸化物の触媒能に与える要因を解明することで、その知見を他の酸化物へ展開させることが期待される。また、ソルボサーマル合成を活用することで合成した希土類炭酸塩や希土類複合酸化物が特異な発光特性を示すことを見出したため、発光メカニズムの解明および高機能化の検討が必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
試料調製の最適化が予定していた以上にスムーズに進行したため、物品費を節約することができ、約14万円を次年度に支出する。特に、安全確保のためのオートクレーブに対するメンテナンス費や英語論文校正謝金等に充当させる予定である。
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