研究概要 |
希土類酸化物および複合酸化物は触媒や蛍光材料の母体として応用されている。そのため、これら生成物の微粒化および形態制御により、特異な物性を付与できると期待できる。しかし、希土類酸化物やガーネット構造をもつY3Al5O12のような複合酸化物は異方性がないか、存在する場合でもその程度が小さいため、形態を制御することは困難である。そこで、本研究ではソルボサーマル法を活用することで異方性の高い希土類錯体の合成を検討した。また、合成した錯体を熱分解させることで希土類酸化物ナノ結晶に変換する手法の確立を目指した。さらに、ソルボサーマル合成した希土類酸化物ナノ結晶の触媒特性および蛍光特性についても検討した。 前年度において、カルボン酸を含む1,4-ブタンジオール中で酢酸セリウムをソルボサーマル反応させることでCe(CnH2n+1COO)・H2Oが得られ、その錯体を熱分解させることで極めて表面積の高いCeO2が得られることを見出した。このように合成したCeO2を触媒担体に用いた触媒は、アルコールの酸化反応に対して高い活性を示した。さらに、ソルボサーマル合成したガーネット構造を有するY3Ga5O12において、Euのような発光中心を添加していないにもかかわらず、特異な発光特性を示すことも見出した。 本年度では、主にソルボサーマル合成したY3Ga5O12の形態および特異な発光挙動について検討した。ソルボサーマル合成したY3Ga5O12は300ー500 nm程度の球状粒子であり、この球状粒子内部に多量の細孔が存在していることを見出した。さらに、ソルボサーマル合成直後のY3Ga5O12に観察された特異な発光は、焼成温度の上昇に伴い消失することを明らかにした。この結果は、ソルボサーマル合成直後に生成した酸素欠陥等の欠陥構造が発光中心であることを示唆している。
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