研究概要 |
最近、電子デバイスとして柔軟性、透明性を目指した研究が盛んである。剥離によってナノメーターの厚さにまでシート化される層状無機化合物が着目されている。層状化合物の1種である粘土鉱物は、Mg, Al, Si, Liなどの典型元素のみからなる絶縁体であり、その透明性や剥離性を利用すれば超薄膜絶縁体としての応用が考えられる。特に最近では、粘土層を一層づつ積層する技術が開発され、その方式と組み合わせることによって湿式でナノメーターのオーダーで制御された絶縁層膜となりうる。我々は、合成サポナイトのキャスト膜を光半導体性であるニオブ酸キャスト膜と組み合わせて、電界効果型トランジスタとして働く可能性について検討した。その結果、無機層状化合物のみで構成された初めてのトランジスター作動に成功した。まず、n型半導体である層状ニオブ酸キャスト膜の伝導性について、検討をおこなった。一定電圧をかけ、真空下でキセノン光(340nm)を照射すると、時間とともにゆっくりと電流値が増加する永続型光伝導が生じた。空気を導入すると、酸素によって伝導性電子がトラップされ電流値はゆっくりと下降した。これより、ニオブ酸キャスト膜上に塗布したサポナイト膜はニオブ酸層中の伝導性に影響を与えないこと、および酸素分子が透過することがわかった。次にトランジスタの絶縁層の合成サポナイトはゲートの役割をしていることがわかった。ゲート電圧とみなすと、ノーマリーオン型電界効果型トランジスターとしての動作に対応することがわかった。以上の結果は、ニオブ酸層とサポナイト層の境界でn型半導体における空間電荷領域(欠乏層)が形成されることを示している。 特許に関しては、拒絶に関する反論を行い、粘土鉱物の伝導性に関する特許登録第5476157号を取得した。また、研究分担者は薄膜に関する論文のリバイズを投稿中である。
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