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2011 年度 実施状況報告書

新しいアクセプター型黒鉛層間化合物の合成とその超伝導特性

研究課題

研究課題/領域番号 23655203
研究機関大分大学

研究代表者

豊田 昌宏  大分大学, 工学部, 教授 (00290742)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードインターカレーション / アクセプタータイプ / 硫黄 / カリウム / CaC6 / 超伝導 / XAFS
研究概要

ホスト炭素材料に,HOPG (Highly Oriented Pyrolytic Graphite) を,インターカレートに硫黄を用い,これまでに報告例のない,新しいアクセプター型GICの合成を試みた.Two-bulb法により合成を試みたところ,硫黄単体でのインターカレーションによるS-GICの形成には至らなかったものの,インターカレートに硫黄及びカリウムを用いることにより,空気中で安定なstage-6の三元系KS-GICが形成した.これまで硫黄単体でのインターカレーションは困難とされてきたことから,カリウムのような第三成分を用いた場合では,単体ではないものの,硫黄のインターカレーションが可能であることが示された. また,黒鉛系超伝導物質の超伝導メカニズムの解明を目的とし,CaC6 (Ca-GIC ; Calcium-Graphite Intercalation Compounds) 形成過程の検討と,X線吸収微細構造 (XAFS ; X-ray Fine Structure) を用いた構造解析を試みた.CaC6 の形成は,合成方法,ホスト炭素材料,Li / Ca合金割合及び反応時間に大きく影響を受けることを明らかとした.また,CaC6の形成度合の異なる合成物のXANES (X-ray Absorption Near-Edge Structure) スペクトルを比較したところ,いずれのスペクトル形状も差異が認められなかったことから,CaC6形成過程における,Caの電子状態は一定であることが示唆された.標準試料とCaC6のスペクトルの比較から,黒鉛層間でのCaは,Ca metalに近い状態,すなわち黒鉛層とCa層との間で完全な電子授受が行われないことにより,Ca層が電子リッチな状態であることが明らかとなり,このCaC6の電子構造が超伝導特性に大きく関与すると推察された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

インターカレートに硫黄及びカリウムを用いることにより,空気中で安定なstage-6の三元系KS-GICが形成したことから,カリウムのような第三成分を用いた場合では,単体ではないものの,硫黄のインターカレーションが可能であることが示された結果より,おおむね順調に研究が進行していると判断した.また,超伝導特性を示すCaC6の電子状態をXAFSを用いて解明できる手立てを明らかにしたことから,材料設計の指針にも成り,今後に期待が持てる.

今後の研究の推進方策

アクセプタータイプのGICの合成には,硫黄を含む錯体を含め,新たなインターカレートを検討する必要もある.標準試料及びCaC6のXANES解析から,CaC6の電子状態は,Ca層が電子リッチな状態であることが明らかとなった.しかし,EXAFSの解析では,EXAFS振動をフーリエ変換する事により,吸収原子周りの種々の情報を得る事が出来ることから,CaC6のEXAFS解析によってCa原子から隣接原子までの距離,その種類及び数などのいわゆる動径分布の情報が得られるものと考えられ,CaC6の形成及び超伝導メカニズムの一助となるものと考えられる.そこで,今後のCaC6解析については,EXAFS解析及びXANES解析の情報を組み合わせた結果が必要である.

次年度の研究費の使用計画

前年度に残額が生じた理由は,これまでの基礎研究段階で準備した試料を引き続き使用できたことにより,消耗品代金が軽減できたためである.24年度は,消耗品の在庫が無くなったことから.それらの購入に充てる予定である.消耗品は,CC6を合成するためのグローブボックスに使用するArガス,金属メタル,あるいはtwo-bulb法を用いた合成に使用する石英ガラス管等に使用する.旅費は,高エネ研(つくば)での放射光を利用したXAFS測定の為の旅費に使用する.

  • 研究成果

    (3件)

すべて その他

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 電気化学的手法による新しい黒鉛層間化合物の合成

    • 著者名/発表者名
      大内康裕,衣本太郎,津村朋樹,豊田昌宏
    • 学会等名
      第48回化学関連支部合同九州大会
    • 発表場所
      北九州国際会議場
    • 年月日
      平成23年 7 – 9
  • [学会発表] Synthesis of novel acceptor type graphite intercalation compounds by using electrochemical processing

    • 著者名/発表者名
      M.Toyoda, Y.Ohuchi, T.Kinumoto, T.Tsumura
    • 学会等名
      16th International Symposium on Intercalation Compounds
    • 発表場所
      Prague, Czech Republic,
    • 年月日
      平成23年 5 – 22-27
  • [学会発表] ピッチ系炭素繊維層間化合物の形成についての検討

    • 著者名/発表者名
      大内康裕,衣本太郎,津村朋樹,豊田昌宏
    • 学会等名
      第38回炭素材料学会年会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      平成23年 11 – 29-121

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公開日: 2013-07-10  

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