研究概要 |
1ナノメートル(nm)は10億分の1mのことであり、粒子の大きさがnmを単位として測定されるような小さなものをナノ粒子と呼ぶ。がん細胞としてヒーラ細胞(ヒト子宮頸部がん細胞)を用いて、細胞死滅活性を調べた。酸化鉄のような磁性ナノ粒子に交流磁場を印加し、温度を上昇させてがん細胞を死滅させることが出来る。これをハイパーサーミアという。ダンベル型の酸化鉄 (Fe3O4, γ-Fe2O3、α- Fe2O3)や八面体の酸化鉄の合成とハイパーサーミア、鉄を一部含むTiO2表面に銀をつけたナノ複合体と可視光によるハイパーサーミア、α-とγ-Fe2O3の混ざったものの合成と光と交流磁場の協同効果によるハイパーサーミア、共同沈殿法と水熱法で合成した酸化鉄の比較とハイパーサーミア、薄い金で覆ったFe3O4ナノキューブの合成と酸化鉄により発生する熱と金が光を吸収して発生する熱との協同効果によるハイパーサーミアなどを発見した。 超音波照射法により合成したFe3O4ナノ粒子を用いてパルス交流磁場による発熱特性とヒーラ細胞への影響を調べた結果、充分実用可能なレベルの加熱効果が得られ、ヒーラ細胞生存率はほぼゼロとなった。さらに、パルス磁場照射法において、パルス周波数を変えることで、加熱温度を制御できることが分かった。一方、磁性ナノ粒子が無い場合はパルス周波数やパルス発生比率を変えても全く発熱しなかった。ヒーラ細胞への影響もほとんど見られなかった。 磁性ナノ粒子を含む水溶液にパルス交流磁場を印加し、音波検出用のマイクロホン解析装置を用いて,音波検出の実験を行った。しかし,パルス交流磁場自体がノイズとなり、検出の邪魔になることが分かった。そこで、音波の検出の際の課題等について検討をおこなった。今後はレーザー光パルスのような、強力な磁場強度をもつ交流磁場パルスの開発が急務であると考えられる。
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