研究概要 |
(1) W-N系結晶合成 Pbフラックスを用いてW-N系の結晶合成を試みた。結晶合成条件は、1,200℃、窒素1GPaで、Pbフラックスに対してWの比率を5~30at.%まで変化させて、フラックス内でどのような物質が合成されるかを確認した。W:Pb=5:95において得られた結晶のXRD測定を行った結果、得られた結晶は、単一相ではなく、複数の相から成る回折パターンを示した。メインピークはWO3であったが、多くのマイナーピークは同定することが出来なかった。また、元素分析の結果、W,O,Nが検出された。このことから、WO3に加えて、複数のW-N系結晶、W-O-N系結晶が合成されていることが示唆された。WO3以外は既存の結晶データと合致するものがなかったことから、新結晶が合成された可能性が高い。次に、温度1,200℃、窒素1GPaにおいて、W:Pb=5:95~30:70の組成時に液中で合成された結晶のXRD測定を行った。フラックス中にWの割合が多くなるほど、合成物中の窒化物や酸窒化物はWO3の単一相へと変化していった。原因として、Wを多く含む融液は・坩堝材のアルミナを溶解する、或いは・雰囲気中に含まれる酸素不純物を多く溶解させる、という仮説を立てている。 (2)Sc-N系結晶合成 Inフラックスを用いて、In-Sc合金融液に高圧窒素ガスを溶解させる手法を用いてScN結晶合成を試みた。結晶合成条件は、1,300℃、窒素50MPaで、Inフラックスに対してWの比率を10~30at.%まで変化させ、1時間の加圧・加温で合成を試みた。不純物を一切含まないScN結晶が合成され、収率は仕込んだSc量に対して100%であった。フラックス内で合成された結晶は、サイズが約20µmの単結晶状であり、(111)と(100)を構成面としていた。また、結晶表面が骸晶となっていることから、育成中、かなり高過飽和状態にあったと推察された。今後、過飽和度を抑えることで、大型単結晶が得られる可能性を示唆する結果であった。
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