研究課題/領域番号 |
23655214
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
池田 裕子 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (10202904)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | ゴム / 加硫 / 金属酸化物 / 亜鉛 / 活性化剤 |
研究概要 |
一般に、加硫反応には酸化亜鉛(ZnO)が使用され、高性能ゴム製造に至っている。しかし、亜鉛鉱石の可採年数が22年程度と言われていることから、現在の水準でゴム製造に亜鉛が消費されるとその不足事態は免れず、ゴム製品の不足は社会に大きな混乱を招くと懸念される。また、タイヤの磨耗による亜鉛微粒子の環境汚染がEUを中心に問題化されつつある。そこで本研究では、ゴム材料の硫黄を用いた三次元化網目形成反応で、「亜鉛フリー」の新しい加硫反応構築に挑戦することを最終目的として研究を行った。先ず1年目では、ZnO以外の他の金属酸化物の加硫反応への有用性を明らかにするために、ZnOが加硫反応においてどのように寄与しているかを探究し、そして、酸化マグネシウム(MgO)、酸化銅(CuO)を用いて比較実験を行った。実験法は、イソプレンゴムをもちいて、汎用の二本ロールで金属酸化物、ステアリン酸、ベンゾチアゾール系促進剤、硫黄を混練して配合物を作製し、そして、得られた配合物をキュラストメータ測定と時分割フーリエ変換赤外吸収スペクトル測定に供し、加硫反応挙動を追跡した。同時に、配合物を熱プレスしてゴムシートを作製し、その力学物性も比較検討した。その結果、(1)MgOとCuOのいずれの金属酸化物も加硫反応の開始を早める働きがあること、(2)これらの金属酸化物は加硫速度に大きな変化はもたらさないこと、(3)MgOやCuOは、加硫の反応率上昇にはほとんど寄与しないことが判った。これらの結果は、ゴムの加硫反応におけるZnOの代替が他の環境に優しい金属酸化物では非常に困難なことを示めした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化亜鉛の加硫反応における有用性を明らかにし、我々が提案している加硫メカニズムに合致することを見出した。酸化亜鉛の性能に匹敵する環境適合性のある金属酸化物はほとんどないことが明らかになった。従って、計画通り、本申請研究の第二段階目に進むことになるから。
|
今後の研究の推進方策 |
先ず、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウムの加硫試薬としての性能を評価する。そして、我々が論文発表した加硫における二相網目不均一構造形成がZnO無しにどう形成できるかに関して探究を進める。つまり、「網目ドメインを形成させる硫黄架橋反応」で、ZnOを用いずに数十ナノメーターサイズの網目鎖密度の高いドメイン相を創生できるかどうかを検討する。ひとつの方法は、シリカ粒子の表面化学修飾を行って、硫黄および硫黄系化合物とのアフィニティが高いナノシリカ粒子を作製することである。そして、二本ロールを用いて硫黄や加硫促進剤等を混練し、キュラストメータによる加硫度測定や時分割赤外吸収スペクトル測定、示差走査熱量分析で加硫反応性を研究する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究計画であった「有用と見出した金属酸化物の金属元素に関するX線吸収微細構造測定をシンクロトロン放射光を用いて行い、加硫反応の進行をin situに分析する」という項目が実験結果に基づき不要となったために、442,820円を次年度に持ち越した。その結果、当初から使用予定の研究費(物品費、旅費、人件費、謝金、その他)1,100,000円に加えてこの研究費を平成24年度研究計画遂行のために使用する。特に、タイ国シンクロトロン放射光施設での硫黄元素に関するK殻X線吸収微細構造測定を行うための旅費、国内資料収集旅費、および、実験補助の謝金とする予定である。そのため、合計1,542,820円を次年度の当該研究の研究費として使用する予定である。
|