研究課題/領域番号 |
23655215
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西野 孝 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40180624)
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研究分担者 |
小寺 賢 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80403301)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高分子構造・物性 / 高分子合成 / 構造・機能材料 / 表面・界面物性 / 環境対応 |
研究概要 |
モノマーからの高分子合成ではなく,成形済の結晶性高分子固体に対する後反応により,結晶・非晶の高次構造をモノマー連鎖長に反映させたブロック共重合体の創製を目的として研究を開始した。本研究では,非晶領域に迅速に拡散する超臨界二酸化炭素を反応媒体として利用し,非晶のみでの迅速な反応を通して,結晶性高分子の高次構造を鎖の一次構造制御に反映させ,従来の合成法とは全くパラダイムを異にするブロック共重合体創製の手法をめざしている。初年度においては,結晶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA)を被修飾体として取り上げ,その固体フィルムに対し,超臨界二酸化炭素(sc-CO2)中で,長鎖アルキル基を有するラウリン酸クロライド (C11H23COCl) を用いたアシル化を試み,親水性高分子の成形体にブロック的に疎水基の導入を試みた。得られたフィルムのバルク構造をX線回折,赤外線吸収スペクトル,元素分析により評価した結果,結晶領域を破壊することなくアシル基を側鎖に導入することに成功した。さらに長鎖アルキル鎖が自己組織化し,主鎖・側鎖共に結晶性のX線回折ピークを出現させることを見出した。これらを通して,同手法の有効性を明らかにすることができた。したがって本研究の初年度は当初計画通りに遂行することができた。しかしながら,研究の過程において,修飾物表面が粘着性を示すことを別途見出し,粘着特性としてタック,剥離強度,保持力の三特性の測定を行った結果,市販粘着テープと同等以上の性能を発揮することを明らかにした。この新発見の解析に時間を要したため,備品を必要とするステップが次年度へと後ろ倒しとなった。平成24年度には実施計画に再び戻って,引き続き本コンセプトの有効性を検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」で取り上げたコンセプトの有効性を示すことができたことから,おおむね研究計画は順調に推移した。さらに加えて,研究の進展に伴い,「表面への粘着性の付与」という当初計画では予想しなかった発見があり,挑戦的萌芽研究としての意義を見出すことができた点,当初計画以上の進展と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の後半は新発見の解析に主に従事した結果,当初計画に記した予定は若干遅延している。そこで平成24年度には本来の研究計画に戻ることで,引き続き本コンセプトの有効性を検討していく予定であり,その遂行には問題点はないものと考えている。本研究で得られた成果については引き続き,学術発表,報告,論文として公表していく予定である。さらに,国民向けの情報発信についても積極的に取り組む予定である。たとえば西日本私立小学校教員研究発表会や神戸大学同窓会での依頼講演を受けている。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述のように研究は順調に推移しており、新たな発見とその解析に時間を要したが、次年度には当初計画のレールの上に戻り、引き続いての実験のための二酸化炭素、合成のための試薬などの消耗品費、成果発表のための旅費、熱測定のための付属備品の購入を計画している。
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