研究課題/領域番号 |
23655215
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西野 孝 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40180624)
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研究分担者 |
小寺 賢 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80403301)
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キーワード | 高分子構造・物性 / 高分子合成 / 構造・機能材料 / 表面・界面物性 / 環境対応 |
研究概要 |
モノマーからの高分子合成ではなく,成形済の結晶性高分子固体に対する後反応により,結晶・非晶の高次構造をモノマー連鎖長に反映させたブロック共重合体の創製を目的として研究を開始した。本研究では,非晶領域に迅速に拡散する超臨界二酸化炭素を反応媒体として利用し,非晶のみでの迅速な反応を通して,結晶性高分子の高次構造を鎖の一次構造制御に反映させ,従来の合成法とは全くパラダイムを異にするブロック共重合体創製の手法をめざしている。本申請においてはこれまで結晶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA)を被修飾体として取り上げ,その固体フィルムに対し,超臨界二酸化炭素(sc-CO2)中で,長鎖アルキル基を有するラウリン酸クロライド(C11H23COCl) を用いたアシル化を試み,親水性高分子の成形体にブロック的に疎水基の導入に成功した。さらに,平成24年度はポリエチレンへの無水マレイン酸のグラフトを試みた。同手法は工業的にも広く採用されているが,従来は溶融状態あるいは溶液に対する修飾が採用されてきた。今回はこれを本手法で特徴としている,固相に対する超臨界二酸化炭素中での修飾として試みた。これにより,結晶性を落とすことなく修飾が可能であると期待できる。したがって,ポリエチレンの中でも特に,超高分子量ポリエチレンのゲルキャスト物の超延伸試料に対して修飾を試みた。その結果,高弾性率,高強度といった本来の特性を損なうことなく,同試料に高接着性,高い耐クリープ性,高染色性などの特性を付与することに成功した。さらに構造解析を進めた結果,ポリエチレンの極めて高い配向度,結晶化度が損なわれていないことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は高分子固体の高次構造を利用したブロック共重合体の創製という新概念の構築,平成24年度は,同概念の展開を図ってきた。いずれも,当初計画通りに研究は推移している。 また,昨年度は「表面への粘着性の付与」という当初計画では予想しなかった発見があり,挑戦的萌芽研究としての意義を見出すことができた。 したがって,これまで研究は順調に推移していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる平成25年度は,これまでの成果を基にして,水酸基のみをポリエチレン鎖に導入するため,イソプロペニル酢酸のグラフト/ケン化を行う。ケン化して得られるポリイソプロペニルは,高表面エネルギー,高接着性,低タンパク質吸着性,抗血栓性を有する高分子であることが知られている。本研究では同手法をポリエチレンへの短鎖グラフトに利用することで非晶領域だけが修飾されたブロック共重合体を創製し,。得られた試料の親水性,接着性,生体適合性を評価する。 さらに,これら環境調和プロセスで得られる,高分子の高次構造制御に基づいて創製されたブロック共重合体について,得られた結果の総括を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの成果を基にして,上述のような具体的内容にて研究の進展を図る。そのための消耗品,成果発表のための旅費,英文論文のための添削を研究費として使用する予定である。それとともに,最終年度にあたり,3年間の研究の総括を行う。
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