研究課題
モノマーからの高分子合成ではなく,成形済の結晶性高分子固体に対する後反応により,結晶・非晶の高次構造をモノマー連鎖長に反映させたブロック共重合体の創製を目的として研究を開始した。本研究では,非晶領域に迅速に拡散する超臨界二酸化炭素を反応媒体として利用し,非晶のみでの迅速な反応を通して,結晶性高分子の高次構造を鎖の一次構造制御に反映させ,従来の合成法とは全くパラダイムを異にするブロック共重合体創製の手法をめざした。結晶性高分子としてまずポリビニルアルコール(PVA)を被修飾体として取り上げ,その固体フィルムに対し,超臨界二酸化炭素(sc-CO2)中で,長鎖アルキル基を有するラウリン酸クロライド(C11H23COCl) を用いたアシル化を試み,親水性高分子の成形体にブロック的に疎水基の導入に成功した。さらに,得られた材料表面が粘着性を示すことを見出し,基材・粘着剤のワンポット創製が可能となった。また,ポリエチレンへの無水マレイン酸のグラフトを試みた。同手法は工業的にも広く採用されているが,従来は溶融状態あるいは溶液に対する修飾が採用されてきた。今回はこれを本手法で特徴としている,固相に対する超臨界二酸化炭素中での修飾として試みた。これにより,結晶性を落とすことなく修飾が可能であり,ポリエチレンの中でも特に,超高分子量ポリエチレンのゲルキャスト物の超延伸試料に対して修飾を試みた。その結果,高弾性率,高強度といった本来の特性を損なうことなく,同試料に高接着性,高い耐クリープ性,高染色性などの特性を付与することに成功した。さらに構造解析を進めた結果,ポリエチレンの極めて高い配向度,結晶化度が損なわれていないことを見出した。このように,本研究は成功裏に計画を順調に進めることができ,さらに当初予想しなかった有益な知見を得ることができ,萌芽研究の目的を達成した。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Carbon
巻: 70 ページ: 38-45
10.1016/j.carbon.2013.12.055
J.Macromol. Sci.Part B, -Phys.
巻: 52 ページ: 1861-1869
10.1080/00222348.2013.808942
Polymer
巻: 54 ページ: 2435-2439
10.1016/j.polymer.2013.03.005
http://www2.kobe-u.ac.jp/̃tnishino/cx4.html