研究課題/領域番号 |
23656001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
島田 敏宏 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10262148)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 有機半導体 / 単結晶 / ドーピング / 熱電効果 |
研究概要 |
本研究では、高ドープした有機半導体の単結晶をウェファサイズで育成し、応用物性研究を行うことを目標としている。特に、我々が計算化学的に見出した熱電効果の可能性を追求する。 単結晶成長法としては、我々が見出したフラックス(融剤)を用いた装置を開発するため、様々な方法を探索した。まず、銅フタロシアニンとC60に対してフラックスであるアントラキノンへの溶解度を示差熱分析によって明らかにした。溶解度が10%以下と小さいためか包晶ができるため、フラックスに溶けた300℃の溶液から冷却固化させる方法では結晶がmmサイズ以下と小さいものや針状結晶しか得られなかった。2温度式の容器を用いて容器の上端を冷却することにより、溶媒が先に凝縮することによって溶液濃度を徐々に上昇させることが可能であり、単結晶を得ることができた。まだ2mm程度のサイズであるが、端緒をつかんだので大型化を試みている。この方法は、溶媒の蒸気圧が高いもの(ナフタレンなど)や溶解度が小さい分子についても適用可能であると予想している。現在開発中の装置を用いれば、数cm程度にできると考えている。 ドーピングについては、FeCl3がアントラキノンに溶けてドーパントとして有機物に取り込まれることを明らかにした。特徴的なX線回折が得られているので、その解析から構造を決めるとともに、電子物性を明らかにしたい。 熱電効果については、電導度が高い単結晶が得られていないのでまだ測定できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最大の困難は、これまで作られたことのない有機半導体のウェファサイズ単結晶の作成法を工夫するところにある。昇華性の有機半導体をフラックスを用いて析出させることにより単結晶成長を試みたが、昇華を抑えるために完全に封止した容器全体を加熱する必要があった。しかも、ブリッジマンやゾーンメルティングのような加熱冷却のみでは包晶ができるためか、大きな単結晶は得られなかった。様々な試みの結果、封止容器の一部を冷やすことにより、昇華した溶媒を徐々に凝結させることができ、その結果溶液の濃度が上がって溶質が結晶成長することを見出した。この方法では、溶液の温度は変わらないので包晶ができにくいと考えられる。この方法を見出したので、もうすぐ結晶は得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2011年度に開発した、フラックスを徐々に凝結させ除去する方法を改良し、cmスケールの単結晶を作れるようにする。ドーピングについては、X線回折を詳細に行ってドーパント位置やその濃度の可変性を調べる。熱電効果については、熱電能、熱伝導度、電気伝導度などを正確に評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
<23年度未使用額の発生理由>年度末多忙につき、予定していた消耗品発注が行えなかったため。<上記未使用額の24年度での使用予定>年度初めに必要な消耗品を購入して使用する予定である。<24年度の研究費の使用計画>単結晶育成のための装置を大型化するのに用いる。単結晶が得られたら、熱電能、熱伝導度、電気伝導度など、熱電材料としての性能を正確に評価する。そのための測定装置(少額の物品で構成する予定)を作っていく必要がある。また、ドーパントの位置や電子状態を分析するために大学共通分析機器の使用料が必要である。
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