研究課題/領域番号 |
23656002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村山 明宏 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (00333906)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 半導体 / 量子ドット / 表面プラズモン |
研究概要 |
本研究においては、化合物半導体量子ドットに原子オーダーで長さを制御した分子鎖を結合させ、その反対側に金属ナノ粒子を結合させたハイブリッド量子ドットダイマー構造を作製する。そして、このハイブリッド量子ドットダイマーにおいて、金属ナノ粒子の局在型表面プラズモン電場により増幅された半導体量子ドットの光応答特性を明らかにすることを研究目的としている。 平成23年度は、まず、内部に5 nm程度の一定の大きさを持つ空孔構造を持つ高分子タンパク質の空孔にCdSやZnSなどの極めて高い発光効率を持つ化合物半導体量子ドットを溶液法より成長させた。さらにこの半導体量子ドット内包タンパク質と直径15 nmほどの金のナノ粒子を分子鎖により結合させたハイブリッド量子ドットダイマー試料の作製を行った。ここで、半導体量子ドットと金ナノ粒子の間隔は分子鎖構造により正確に3 nmに固定されている。 次に、このようにして作製したハイブリッド量子ドットダイマー試料の発光特性を顕微発光分光やピコ秒時間分解発光分光により研究した。CdS量子ドットを内包したハイブリッド量子ドットダイマー試料において、金のナノ粒子の吸収帯と一致する可視領域の発光スペクトルを観測し、作製した試料の良好な光学特性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度は、本研究で作製を試みる、原子オーダーで長さを制御した分子鎖により化合物半導体量子ドットと金属ナノ粒子を結合させたハイブリッド量子ドットダイマー構造について、外部との共同研究により、当初の計画にはない新しい作製方法を確立することができた。今回確立した、内部に一定の大きさを持つ空孔構造を持つ高分子タンパク質の空孔に化合物半導体量子ドットを成長させ金属ナノ粒子を分子鎖により結合させたハイブリッド量子ドットダイマー構造は、タンパク質の分子構造により半導体量子ドットや金属ナノ粒子との間隔がナノスケールで正確に制御できる非常に優れた方法である。したがって、本研究の遂行上大きな利点となり、当初の計画以上の進展と考えることができる。。 また、このようなハイブリッド量子ドットダイマー試料に対して、既に発光分光などの光学特性の測定を実施しており、この面からも計画以上の進展が見られている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた、内部に一定の大きさを持つ空孔構造を持つ高分子タンパク質の空孔に化合物半導体量子ドットを成長させ金属ナノ粒子を分子鎖により結合させたハイブリッド量子ドットダイマー構造において、まず金属ナノ粒子との距離を変えた試料の作製を試みる。特に、本研究の目的とする半導体量子ドットに対する金属ナノ粒子の局在型表面プラズモン効果を高めるためには、半導体量子ドットと金属ナノ粒子間の距離を5~10 nmと大きくすることが有効と考えられる。 次に、このように結合分子鎖の長さを変えて半導体量子ドットと金属ナノ粒子間の距離を制御した各種のハイブリッド量子ドットダイマー試料に対して、顕微発光分光やピコ秒時間分解分光などの光学測定を行い、発光強度や発光の寿命などの量子ドット・金属ナノ粒子間距離依存性を明らかにする。 以上により、特定の吸収帯域を持つ半導体量子ドットと金属材料やその粒子径に依存したプラズモン吸収を持つ金属ナノ粒子両者の結合距離を考慮した、量子ドットの発光効率やエネルギー移動による発光寿命に対する統一的な解釈を得る。すなわち、半導体量子ドットの光応答において、励起光電場と発光電場に対する局在型表面プラズモン効果と、半導体量子ドットから金属ナノ粒子へのエネルギー移動効果の両者を正確に制御し、半導体量子ドットの発光強度やそのピコ秒ダイナミクスを最大効率化するための指針を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究推進方策に基づき、各種ハイブリッド量子ドットダイマー試料の作製と顕微発光分光やピコ秒時間分解分光などの分光計測を推進するため、薬品類、高純度半導体や金属原料、光学部品等の消耗品を購入する。 なお、経費の節減の結果生じた使用残について、このような薬品類、高純度半導体や金属原料、光学部品等の購入の一部に使用する。 また分光計測の推進に関連して、各種の分光計測データーの解析を行うためのデーター解析用PCを1台購入する予定である。 その他、共同研究を推進するための研究打合せや成果発表のための旅費や論文印刷費が必要である。
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