研究課題
塩素酸ナトリウム結晶はキラルな性質を示すが分子自身はキラルな性質を示さない。この結晶のキラル発生のメカニズム研究は、溶液の攪拌方法を変えるなどの単純な実験的な方法を繰り返すことで行われていた。しかし、出来上がった結晶のキラリティを統計的に計測するだけではメカニズムの解明にはほど遠い。これを解決するために、キラルな結晶ができる課程を偏光を利用して光学的に"その場"観察した。 まず新しい事実として、キラルな結晶(立方晶系)が形成される前に対称性が低い準安定相が形成されること、これらが成長中に相転移してキラルな結晶になることがわかった。この相転移には二通りのメカニズムがあり、固体相転と溶解を経た再結晶による相転移メカニズムがあることがわかった。前者の相転移は後者に比べて急速である。 この準安定な結晶の結晶学的な性質をX線で構造解析した。ただ、準安定相は少しの衝撃でも固体相転移をおこすので冷却ガスを吹き付けながら4軸回折カメラで構造解析した。その準安定相は単斜晶系でありキラルな性質を示さないことが分かった。 この準安定相の溶解度の温度依存性も測定した。それによると、この準安定相は非常に高過飽和度条件でのみ形成されることが分かった。したがって、準安定相経由でキラルな安定相ができるには、核形成段階で高過飽和になる必要がある。しかし、この準安定相経由のキラルな発生は、その過程を直接観察しながら行っているので、これまでにない新しい研究成果として成果をとりまとめている。
1: 当初の計画以上に進展している
従来のキラル発生メカニズムは容器内の溶液を攪拌してできたキラル結晶の数を統計的に調べるなど間接的な方法で調べられてきた。これを、直接"その場"で観察できるようになったことは大きな進歩であり、かつ、キラル結晶の析出の前駆体として、新たに見つけた準安定相が形成されるという観察結果を導くことになった。これらの研究は萌芽的研究として相応しい成果となっている。
これまで行えなかった結晶表面の原子配列からのキラリティの判別を行うため、原子解像度をもつFM-AFMの活用を計画している。
研究成果を国際学会やシンポジウムで可能な限り発表を行うだけでなく、海外の同種の研究を実施している研究者との交流を図り国際共同研究テーマとしたい。
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