研究概要 |
本年度は, GaNの他InNやAlNの界面ポラリトン効果および電気双極子吸収効果について昨年度からの薄膜へのp偏光入射にともなう上下面での分極効果に基づく現象に加え、薄膜表面をストライプ型の段差構造としたものを対象に検討を行った。また窒化物半導体と比較して結晶欠陥が少なく、同じ振動面で2種類の振動モードが存在することが分かっているGaInPに関し、量子干渉効果の発現について検討を行った。 前者においては、AlN, GaN, InNの界面におけるポラリトン伝播について、その散逸速度を含めて伝播特性が解明された。ストライプ構造では、段差構造の凹部に金属を埋め込んだ試料において、ストライプ長手方向に垂直な偏光面をもつs偏光においてLOフォノンエネルギー位置に大きな反射ロスが生じること、この反射ロスはこれに垂直なs偏光では生じないことが分かった。これよりストライプ断面での分極電荷による電気消双極子吸収が発現したと考えられる。これにより、本研究で提案する構造での光吸収効果が立証できたと考えられる。 量子干渉効果については、GaInPのラマン分光とそのスペクトル解析が進められた。昨年度に加え、785nmの励起波長を用いて検討を行った。オーダリング構造の一部残存などに影響すると考えられる追加遷移過程を取り入れることにより、スペクトルフィッティングがほぼ完全に行われた。これにより、量子干渉効果を導入することによって初めてスペクトルが再現できることが実証された。本結果は、本研究の目的となるフォノン系2準位と電子系連続準位による量子干渉効果の成立を示し、上記の光吸収効果と合わせ、電磁誘起透明化に繋がる着実な進歩が達成されたと考えている。
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