研究課題/領域番号 |
23656012
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉野 淳二 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (90158486)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | スピン流 / バイポーラ拡散 / 熱電効果 |
研究概要 |
本研究では,磁性体中の電子とホールのバイポーラ拡散を利用して温度勾配によりスピン流を効率的に発生させる新しい物質群を探索し,それを実験的に検証することを目指している. 研究計画初年度に当たる本年度は,まず,ホイスラー合金系,ハーフホイスラー系,および閃亜鉛鉱型遷移金属プニクタイトを候補対象に選び,第一原理電子状態計算を用いて,構成元素を系統的に変化させて電子状態の化学種依存性を調べ,本研究の目的に適した電子系を有する物質群を発見するための,指導原理を探索した.具体的には,ホイスラー合金,ハーフホイスラー合金においてカチオン副格子の価電子数の差を系統的に変化さえた物質に対するの電子状態の系統的変化を調べたが,これまで,目的の電子状態を有する物質探索に有効な指導原理を得るに至っていない. この物質探索と並行して,スピン流発生の実験的な検証を行う準備として,助成金を利用して5Kから室温間の温度域の熱電効果を測定するための磁性体熱電効果測定用4KGM冷凍機を整備するとともに,測定法を技術を確立するため,実際に閃亜鉛鉱型遷移金属プニクタイトの一種である強磁性半導体(Ga,Mn)Asの熱電効果測定を行った.さらに,温度勾配により(Ga,Mn)As中に発生するスピン蓄積・空乏をPt電極中の逆スピンホール効果により測定する手法を用いて,スピン流を検出できることを確認するとともに,(Ga,Mn)As中のMn濃度およびホール濃度の増大に対してスピン蓄積・空乏が,増大すること,言い換えるとスピン流が増大するという結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に,電子状態計算を用いて目的とする物質群探索のための指導原理を発見することを目指していたが,原子置換により予想していた電子状態変化が得られず,この観点ではいくぶん研究計画に遅れがある.しかし,並行して行った,スピン流測定のための実験系の整備は順調に進み,(Ga,Mn)Asのスピンホール起電力のパラメータ依存性を明らかにした点では,順調に研究が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,第一原理状態計算を用いた物質探索の候補対象として強磁性状態を対象として目的とする電子状態を有する物質群の探索を試みたが,今後は,反強磁性体を含めて物質探索を行う.また,実験的には,候補物質群が絞られた段階で,試料を系統的に作製して,逆スピンホール効果により測定する手法を用いて,スピン流の大きさを評価して,バイポーラ拡散を利用して大きなスピン流が得られることを原理的に検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,候補とする物質群が絞られた段階で,電子状態を原子置換により系統的に変化させた試料を作製することを予定しており,従って,研究費は,主としてそれらの原料費としての使用を予定している,その他,必要に応じて成果発表のための旅費,論文出版にかかる経費として使用を予定である. なお,初年度に購入を予定していた「磁性体熱電効果測定用4K GM冷凍機」に関しては,H24年2月13日に納入が終わり,既に研究遂行に利用しているが,事務手続き上の遅れのため,支払いが,H24年度にずれ込んだ.このため,その支払額が,次年度使用額として残っているが,これにより実質的な研究費の使用計画の変更はない.
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