研究概要 |
本研究の目的は金属塩化物とメタケイ酸ナトリウムの水溶液を湿式混合する独自の製法で磁気ナノ微粒子を生成し、磁気的性質を明らかにし、官能基を修飾しがん細胞選択性を持たせる。この微粒子をハイパーサーミア(温熱療法)へ応用するために微粒子の交流磁場による発熱特性を評価することであった。 1.サンプルの作成と選択: ハイパーサーミア用媒体として有用と予想した系、特にマグネタイト(Fe3O4)にコバルト(Co)イオンをドープしていくFe-Co-O系について、Coの組成や粒径を制御しながら試料を作成した。粒径は6.3 nm から21.2 nmまで焼く10種類のサイズをそろえた。組成はFe3-xCoxO4において x = 0, 0.3, 0.5と変化させた。XRD, XRF, TEM, FT-IRなどの測定から単相のスピネル構造でCoのドープ量もほぼ仕込みどおりであることを確認した。 2.磁化測定: 前年度までの実験結果より、本微粒子の発熱機構は主にネール緩和による発熱が支配的であることが明らかになったため、交流磁化率の虚数部に注目し、周波数依存性、温度依存性、粒径依存性を詳細に調べた。上記組成のうちx=0.3のサンプルの、各粒径別の交流磁化率虚数部(χ")の温度変化では、7.5 nmのものが室温付近に最大ピークを持つので、この試料が最も発熱すると予想できる。 3.発熱測定: 構築した装置で交流磁場下での昇温特性を測定したところ、磁化測定の結果から予想したとおり、7.5 nmの試料が20度程度の温度上昇を示した。数種の試料の熱散逸量を定量化し、比較して最適化を行った。シャーレを磁場中に置いてin vitroの実験が行えるようコイルの改良も行った。 4.MRI造影剤: MRI造影効果を調べるため鉄酸化物微粒子をアガロースに分散させ初期測定を行った。
|