研究概要 |
本研究の目的は、プラズモン増強効果を利用した有機電界発光素子(有機EL素子)の発光増強とその色相制御を行うことであり、従来の有機EL素子構造に単一プロセスで金属微粒子を層内に組み込むことにより、赤、緑、青の三原色すべてにおいてその増強効果を目指す。また、同一有機EL素子構造を用いて、挿入する種々の金属微粒子を変えることでプラズモン共鳴波長を制御し、有機EL素子の色相制御の可能性も検討する。 すでに検討が終了している、緑色増強に引き続き、赤色のプラズモン増強にも成功した。これは、赤色に吸収波長をもつ、Auナノロッドの合成に成功したこと、また、赤色発光のための素子構造を工夫したことにある。この成果は、応用物理学分野のトップジャーナルの一つであるApplied Physics Expressに掲載された。(T. Tanaka, Y. Totoki, A. Fujiki, N. Zettsu, Y. Miyake, M. Akai-Kasaya, A. Saito, T. Ogawa, and Y. Kuwahara, Applied Physics Express, 4 (2011) 032105.) 色相制御においては、赤色、緑色の色分けを、Au微粒子の形状およびサイズを制御することにより色別増強の効果を検討したところ、増強効果は得られなかったものの、色相制御に関してはある一定の成果が得られた。この成果は解説記事として公表した(藤喜彩、桑原裕司、局在表面プラズモン共鳴効果を利用した有機電界発光素子の高効率化、日本写真学会誌 (2011) 74 (6), 272-279)。 最終年度には、民間企業との共同研究により、AgあるいはAl微粒子を用いて、青色の発光のプラズモン増強が起こるかどうかの検討を行った。有意な増強を得るまでには至らなかったが、明らかな色相の変調を確認した。
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