現在の半導体技術は、バンドギャップをエネルギー的・空間的に制御する“バンドエンジニアリング”により様々な機能素子を実現してきたが、既存のバンドエンジニアリングは、組成制御やドーピングなどのプロセス時で導入されるため、一旦デバイスを作製すると、外部から変調することは難しい。本研究では、次世代のバンドエンジニアリング材料として、擬一次元構造を持ち機械的特性に優れているカーボンナノチューブ(CNT)に注目し、微細加工技術を用いて一本のCNTへの歪印加素子を開発することにより、バンドギャップを高速に変調するという新たなバンドエンジニアリングの構築を行う。また本素子を用いて、未だ観測されていない歪による金属-半導体転移の観測や、従来の固体半導体では実現が難しいバンドギャップ変調による波長可変発光素子および超小型分光器の開発を行う。 これまでに、微細加工技術を用いて、両支持梁構造を有する歪印加素子の開発に関する研究を進めた。ここでは、酸化シリコンおよびシリコンに対して、電子線リソグラフィー、ドライエッチングを施すことにより、両支持梁部分が空中に浮いた構造を作製した。これに対して、梁-歪印可電極間に電圧を印可したところ、梁構造が電圧により駆動し、引っ張り歪印可が可能であることを明らかにした。さらに、フォトルミネッセンスにおいて、発光エネルギーのシフトも観測された。さらに、酸化シリコンに代わり、より機械的強度の強い窒化シリコンを用いた梁構造作成も試み、両支持梁構造の作製に成功した。
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