研究課題/領域番号 |
23656026
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
齊藤 準 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00270843)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 磁気力顕微鏡 / 直流磁場計測 / 表面近傍計測 / 高空間分解能 / 高密度磁気記録媒体 / 永久磁石材料 / ベクトル磁場計測 |
研究概要 |
磁性材料の微細磁区構造観察に広く用いられている磁気力顕微鏡の分野で、これまで困難であった試料表面近傍で直流磁場の方向と強度を同時計測できる、ナノメートルの空間分解能を有する近接場磁気力顕微鏡の開発を目的として、以下の結果を得た。1)提案する近接場磁気力顕微鏡の計測理論を構築し、開発するソフト磁性探針の設計指針を明らかにした。2)近接場磁気力顕微鏡を、小型の走査型プローブ顕微鏡に試作した交流磁場印加機構を組み込んで構成し、観察試料として磁気記録媒体を用いて、本顕微鏡の特長である、試料表面近傍で直流磁場の方向と強度の同時計測を実証した。当該顕微鏡においては、探針試料間距離を減少させることにより、従来の磁気力顕微鏡と比較して、磁場信号の強度が一桁以上向上し、高い空間分解能が大幅に向上することがわかった。3)発生する磁場が弱いために高い計測感度が求められる高密度磁気記録媒体に対して、高い感度が予想されるFeCoを用いた高磁束密度ソフト磁性探針を試作し、試料表面近傍での計測により、線記録密度 1400 kfci(ビット長18nm)の磁気記録媒体において、世界最高レベルの空間分解能6 nmを得た。4)さらに当該顕微鏡が有する磁場の強度と位相のベクトル情報から、位相を調整することにより、任意の観測方向の磁場観察、および直交2軸方向(例えば、試料面に垂直および平行方向)での磁場の同時計測(ベクトル磁場計測)が実現できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、開発する近接場磁気力顕微鏡を具現化し、予測した特長を確認できた。また、世界最高レベルの空間分解能を実証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
観察対象を拡大するために必要となる、高強度・交流磁場印加機構の設計試作はほぼ終了している。当初の予定に従い、大きな試料ステージを有する旧型の大気型走査型プローブ顕微鏡を改造・整備して、試作した交流磁場印加機構を組み込んで、近接場磁気力顕微鏡を構成し、永久磁石を含む様々な観察対象に対して、磁場の高分解能観察を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
高分解能観察に必須となるFeCo系高感度磁性探針の母材であるSi探針や成膜用FeCoターゲット等の消耗品の購入に使用する予定である。
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