液体中アークプラズマを用いたナノ材料の合成は申請者(代表者)が2011年に報告して以来パイオニアとして開発を行っている技術であり、これまでカーボンナノチューブ(単層、多層)、多層フラーレン状炭素ナノ粒子、カーボンナノホーンや、それらの金属複合材料など、様々な機能性炭素ナノ材料をスピーディーに合成する技術として開発を進めている。国内外では当研究を参考にして多くの液体中プラズマ場を用いた材料開発が進んでいるが、液体中高温アークプラズマの様々な構造のナノ材料合成への応用および反応条件に関する研究について申請者が先駆けている。その取り組みの中で、同反応系で反応条件を工夫することによってMgB2ナノチューブやMoS2フラーレンなど新規材材料の合成に成功した経験があり、これらの経験から、今までに例の無い条件を与えることによって炭素系材料でも新規な構造を得ることを目的とした研究を行うことが可能であるという思いに至った。過去には水中アーク放電法によりカーボンナノオニオンやカーボンナノチューブを合成した。今回、その合成時に、アークプラズマができる部分に超音波照射した。本年は、この操作を行うための装置を新たに開発、作製した。さらに、高速度カメラにより、反応場の高分解能撮影を行なった。実験結果では、今のところ超音波照射による生成物の構造の変化や特性の変化の確認はできてしない。ただし、この結果は、水中アーク放電法におけるカーボンナノオニオンやカーボンナノチューブの生成過程を解明するために重要な情報を与える。すなわち、カーボンナノオニオンやカーボンナノチューブは水中アーク放電の反応場でできる気泡の気液界面近傍ではなく、その中心部あたり生成していると考えることができる。追加実験として水中アーク放電法にチタン酸バリウムを電極内に入れた時、チタン酸バリウム由来の新規ナノチューブを合成することに成功した。
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