研究課題/領域番号 |
23656032
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永富 隆清 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90314369)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | X線光電子 / 表面プラズモンポラリトン / 金ナノ粒子 |
研究概要 |
本研究課題では,低速光電子(自由電子)と光の間の表面プラズモンポラリトン(SPP) を介した相互作用を実験的に実証することを目的とする.この目的を達成するために必須な項目として,本研究に適した試料作製法の開発,真空装置であるX線光電子分光法(XPS)装置内へ設置した試料への最適なレーザー光照射系の立ち上げを行った.1.本研究ではSiO2(ガラス)上へAuナノ粒子を高密度で固定する試料作製法を採用し,50 nm程度のAuナノ粒子を高密度配置させたガラス基板を作製した.試料作製に関しては,本学に所属するAuナノ粒子を用いたバイオセンサー作製等を研究している専門家と連携して実施した.ガラス基板上や,Si基板上の極薄SiO2膜上へAuナノ粒子を固定した試料の作製を実施した.ガラス基板上についてはSPP励起による光吸収が起きるAuナノ粒子試料を作製できることを確認した.極薄SiO2膜上への作製については,わずかながら起きる基板等の洗浄中のSiO2膜のエッチングを制御するための詳細な条件の検討を行っている.2.赤,緑,青の各色のレーザー光を,XPS装置内の真空中に設置されている試料表面照射するための光学系を立ち上げた.さらに,装置内のX線源や電子分光器などの配置関係を検討し,できる限り高い効率で試料表面へレーザー光を照射するための反射型,あるいは透過型の試料ホルダーの試作を行った.3.以上と並行して,Auナノ粒子試料のXPS測定の条件等も検討した.XPSスペクトル測定に加えて,より低速である二次電子のスペクトル測定等も行えるよう,試料へのバイアス電圧印加系も試作し,厚いガラス基板上のAuナノ粒子に対しても帯電等の影響なくスペクトル測定を行えることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現段階での達成度は「(2)おおむね順調に進展している」と判断する.試料作製については,本研究の着想段階より試料作製がまず最初の大きな問題であると認識していた.そこで本学に所属するAuナノ粒子の倍音センサーへの応用等を研究する専門家と密に連携することで,Auナノ粒子を高密度で固定したガラス基板やSiO2薄膜試料の作製に成功した.試料作製中に起こるSiO2極薄膜のわずかなエッチングは想定外であったものの,専門家と連携することで,エッチングを制御して試料作製を行うことがほぼ実現できている. また,光学系の設計と立ち上げだけでなく,従来の試料ホルダーよりも高効率でSPPの光励起を行える専用の試料ホルダーの開発も本研究遂行中に着想して遂行しており,当初計画より,より高い効率での実験が可能となっているのは大きな進展である. さらに将来の時間分解計測のために必須である,フェムト秒レーザーを光源に用いた場合の信号強度についても,高エネルギー電子に対する既報告論文の結果なども参考に見積もりを始めている.ここでは,レーザー光によるSPP励起の専門家とも連携して研究を推進しており,計画通り,将来の展開を見据えた研究を遂行できている.
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今後の研究の推進方策 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため,当初の見込み額と執行額は異なった.試料作製については,試料作製中のSiO2薄膜のエッチングをほぼ制御できる段階まで達成できたため,今後,任意の膜厚を持つSiO2極薄膜試料作製や,Auナノ粒子サイズや粒子の分布密度が異なる試料を作製する.また,抗体などで修飾したAuナノ粒子や,さらに抗原反応まで行った試料なども作製し,本研究での試料として検討する. また,より高い効率でSPP励起を行うための試料ホルダーについて更に検討・試作を進める.更に基本3原色のレーザーについて高強度レーザー光照射系の検討と試作,紫外レーザー光導入系の試作などをも行う.以上を総合的に推進することで,低速光電子(自由電子)と光の間の表面プラズモンポラリトン(SPP) を介した相互作用を実験的に実証することを目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含めて当初予定通りの計画を進めていく.
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