本研究の目的は,リング状物質のトポロジーに着目し,これとトポロジーが合致する環状ビームを,申請者らが現在までに独自に開発したモノサイクル域光パルス発生・制御技術と空間的位相・偏光制御技術とを融合させ発生させることにより,1) リング状物質のトポロジーと合致したモノサイクル域光渦・偏光渦の極限時間域環状ビームを用いた 閉ループ時間分解非線型励起および分光の手法を確立すること,2) モノサイクル域光渦・偏光渦の極限時間域環状ビームのトポロジーを利用した回転加速度系の創出による遠赤外領域トポロジカル光波の発生を行うこと,である。本年度は,超広帯域コヒーレントフェムト秒位相・振幅制御技術として,特に,軌道角運動量を自在に変化できる高出力超短・超広帯域光渦パルスを発生法,高精度軌道角運動量スペクトル測定法および光渦を用いたポンプ・プローブ四光波混合信号に対する精度良い軌道角運動量変換法の確立を行った。 1.ホログラム対を用いた4-f光学系と光パラメトリック増幅とを組み合わせた高出力超短・超広帯域光渦パルス発生システムを構築した。これにより,ホログラムの回折効率の低さを補いながら,空間分散がなく,かつ軌道角運動量可変の高出力超短・超広帯域光渦パルスの発生に成功した。 2. 超広帯域光渦パルスにも適応可能な,軌道角運動量スペクトルの精密測定法を提案し、超広帯域光渦パルスにこの手法を適用して本手法の有用性を示すとともに,周波数スペクトル分解軌道角運動量スペクトルの測定にも成功した。 3. 異なる軌道角運動量をもつ光渦を用いたポンプ・プローブ四光波混合信号に対する軌道角運動量スペクトル分解測定法において,発生信号の軌道角運動量スペクトルのサイドバンド発生の原因を明らかにした。これにより,光渦パルスをポンプ光に用いたGaNの四光波混合を通して,精度良い軌道角運動量変換法を確立した。
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