超短パルス高強度レーザーを用いて電子の運動を直接観測・操作するアト秒科学が急速に進展している。とくに実験の精緻化にともない、有効1電子近似を超える多電子・多チャンネルダイナミクスや電子相関への関心が高まっている。本研究では、高強度レーザー場中の原子・分子のダイナミクス(トンネルイオン化や高次高調波発生などの高強度場現象)を、多電子・多チャンネルの効果も考慮して第一原理的にシミュレーションする新しい理論の開発を行った。 この理論では、電子系を外場に反応しないfrozen-core、外場に応答するが閉殻構造を保つdynamical-core、外場にフルに揺さぶられるactiveの3つに分ける。このansatzに対して時間依存変分原理を適用することで、画期的な第一原理的計算方法を導出した。全電子をactiveにすれば多配置時間依存ハートリー・フォック法と等価な厳密計算であるが、coreを導入することで計算量を抑えている。 一次元モデル原子・分子に対する数値計算コードを開発し、この新しい理論の有効性を検証した。たとえば、強レーザー場中の一次元(LiH)2モデル分子のイオン化の進行を計算した。新開発の手法を使うと、全電子をactiveにした厳密計算の50分の1以下の配置数で、よく一致した結果が得られることが分かった。また、高次高調波発生の計算では、active軌道からの寄与と、core軌道からの寄与を分けて計算することで、フレキシブルに解析することができ、物理的な洞察が得られることが分かった。
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