研究課題/領域番号 |
23656046
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
川田 善正 静岡大学, 工学部, 教授 (70221900)
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研究分担者 |
居波 渉 静岡大学, 若手グローバル研究リーダー育成拠点, 特任助教 (30542815)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 高密度光メモリ / 多層光メモリ / 2光子励起 / 共焦点光学顕微鏡 / レーザー走査顕微鏡 / 粘着剤 / フォトクロミック材料 / 収差補正 |
研究概要 |
本研究では、次世代高密度・大容量光メモリの新しい形態としてロール型の記録媒体を有する多層光メモリを開発するための基礎研究を行なっている。本光メモリでは、記録媒体と透明層の2層フィルムをテープ状にロールした記録媒体に、フィルムを展開することなくデータを記録・再生するため、2層フィルムをロールするだけで簡単に多層構造を作製することができる。さらに、シリンドリカルレンズ等を用いて、中心軸方向のデータを同時に再生することにより、データの高速転送レートを実現することを目的として研究を実施している。 今年度は、テープ状の媒体による多層構造の作製について検討した。開発している光メモリでは、記録層と透明層の2層フィルムを作製し、それを巻くことにより簡単に多層構造を作製する事が可能である。多層膜作製のための媒体の構造について検討した。2光子励起過程によって屈折率が変化する材料として、ジアリールエテンをPMMAAにドープし、記録媒体とした。透明層部分は粘着剤を塗布して用いた。記録層膜厚1μm、粘着層膜厚10μmで2層フィルムを作製しすることに成功した。フィルムの強度を向上させるために、今回は保護層としてPVAの保護層を用いたため、層間隔は大きいものとなった。 開発したロール状記録媒体に実際にデータを記録・再生し、2光子励起過程によって、データが記録できることを確認した。媒体表面が曲面形状をしているため、従来の収差補正方法では収束光の球面収差を補正することができず、新たな球面収差補正方法の開発が必要であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画は予定通り達成できたものと考える。まず、感光材料の検討を行ない、2光子励起過程を用いて高感度で記録できる材料として、ジアリールエテンを選択した。ジアリールエテンは、光照射によってその吸収スペクトルが変化し、別の波長の光を照射すると、元の状態に戻る可換性を有する材料である。熱安定性に優れ、記録および消去のくり返し耐久性にも優れる。 ジアリールエテン材料をPMMAにドーブし、記録媒体を作製しその記録特性を調べ、2光子励起過程を用いた記録媒体として優れているを確認した。また、粘着剤を透明層として用い、2層フィルムの作製に成功した。開発した2層フィルムを用いて、ロール状記録媒体を作製し、その記録・再生特性を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
ロール状の記録媒体にデータを記録する際に形成される集光スポットの形状を数値計算により求め、記録媒体に記録されるビットデータの形状を求める。この結果からデータの記録密度の限界を議論する。ロール状の媒体の内部にレーザーを集光した際の収差を解析し、その補正方法を検討する。 1年目の基礎研究の結果から、記録・再生システムの構成を再検討し、合わせて媒体の構成についても検討する。これらの結果から、最適な記録・再生システム、媒体構造について検討する。 また、高速転送レートを実現するために、ロール状媒体の軸に平行方向のデータを並列に再生するための手法を検討する。レーザー走査顕微鏡を基本システムとして、データの記録再生システムを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、媒体走査を高速に実現するための走査ステージおよび記録・再生光学系のための光学部品を主に購入する予定である。記録媒体の作製のための化学薬品等の購入も必要である。これらは主に消耗品としての使用を考えている。また、国内および海外での学会で、これまでの研究成果を発表するために旅費を使用する。
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