研究課題/領域番号 |
23656048
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊東 一良 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80113520)
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研究分担者 |
小関 泰之 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60437374)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ファイバーレーザー / 強度雑音 / 誘導ラマン散乱顕微鏡 / 生体顕微鏡 |
研究概要 |
本研究では、レーザーパルスを超低雑音化する手法として、隣接パルス間干渉法の実証を進めた。本研究で実証する雑音低減手法を用いることにより、無染色イメージング手法として近年注目を集めている誘導ラマン散乱(SRS)顕微鏡において、光源を固体レーザーからファイバーレーザーに置き換えることができ、実用性を飛躍的に向上できる。当初の実験計画では、干渉計を用いて光パルスを2分し、一方に遅延を与えた後、光位相を制御した上で合波する方式を考案していた。しかし、偏波分離・合成をもちいることで、光位相制御を用いること無く、雑音を低減できるアイデアを考案した。そこで、偏波分離・合成による雑音低減の実証とファイバーレーザーベースSRS顕微鏡への適用を進めた。その結果、Erファイバーレーザーパルスの第二高調波の強度雑音を13 dB以上抑制し、ほぼショット雑音限界に迫る強度雑音特性を得ることができた。このパルスを用いて、SRSイメージング実験を行った。繰り返し35 MHzのErファイバーレーザーと同17.5 MHzのYbファイバーレーザーを同期させた。同期手法として、二光子吸収フォトダイオードによるタイミング検出法とErファイバーレーザー内の位相変調器による高速繰り返し制御法を組み合わせた位相同期ループを用いた。同期した2色のレーザーパルスをSRS顕微鏡に導入し、透過光のうち、Erファイバーレーザーパルスをロックイン検出することで、SRS信号を得た。生細胞のSRSイメージングを行ったところ、強度雑音の低減により、核小体などを極めてクリアにイメージングできることがわかった。この結果は現在論文誌へ投稿済みである。このようにして提案する雑音低減手法を実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画では、1年目に(a) 干渉計を用いた雑音低減法を実証し、2年目に(b) SRS顕微鏡への適用を行う予定であった。実際には、前述のように、偏波分離・合成法を新たに考案することで、(a)に相当する研究を加速でき、(b)も1年目に終えることができた。但し、干渉計を用いることでSRS信号の信号対雑音比の更なる向上も期待できるため、2年目には干渉計方式の開発を進めたい。以上のことから、現在の達成度は当初の実験計画と照らし合わせて概ね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、2年目は干渉計を用いた雑音低減手法の開発を進める。まず、空間光学系を用いた干渉計を製作し、その安定化を試みるとともに、強度雑音の低減効果を明らかにする。更に、ファイバーベースの干渉計についても検討を進める。また、強度雑音低減の可能な周波数帯域を広げるアイデアについても、検討を進める。それと並行して、ファイバーレーザー光源の高出力化等を進め、ファイバーレーザーベースのSRS顕微鏡としての性能向上も図っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、提案手法の実証実験が肝要であるため、研究費の約2/3を、光部品、光ファイバー、干渉計制御用の電子回路の部材費や、実験に用いる装置(ファイバー融着器など)で必要となる消耗品の購入に充てる予定である。干渉計の制御に用いるピエゾ素子などは、現在所有する部材を用いる。研究費の1/3を、ファイバーレーザーSRS顕微鏡の論文発表費用や学会発表の旅費に充てたい。
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