非線形光学効果を用いた生体可視化技術の進歩は近年目覚しく,特にロックイン検出を用いる高機能かつ高感度な顕微法が2007 年から2009 年に相次いで提案・実証された.しかし,これらの方式では,超低雑音なパルス光源が必要であり,大型でメンテナンスの必要な固体レーザーの使用が必須であった. 本研究では,小型・安定かつメンテナンスフリーなファイバーレーザーを上記技術に適用するための光源の超低雑音化手法として,隣接光パルス干渉法を提案した.本手法は,繰り返し周波数の半分の周波数における強度雑音を,理論的な最小レベルであるショット雑音限界まで抑圧可能と期待される.これによって,ファイバーレーザーベースの,実用性が高く,高機能かつ高感度な非線形光学イメージング技術の実現を目指した. 当初の実験計画では,干渉計を用いて光パルスを二分割し,一方に遅延を与えた後,光位相を制御した上で合波する方式を考案していた.しかし,偏波分離・合成をもちいることで,光位相制御を用いること無く,雑音を低減できるアイデアを考案した.そこで,偏波分離・合成による雑音低減の実証とファイバーレーザーベース誘導ラマン散乱(SRS)顕微鏡への適用を進めた.その結果,ファイバーレーザーパルスの雑音を22 dB以上抑制し,ショット雑音限界に迫る強度雑音特性を得ることができた.このパルスを用いて,SRSイメージング実験を行った結果,ポリマービーズを0.4 s/frameの高速性をもってイメージングすることに成功した.このようにして,提案する雑音低減手法を実証できた.
|