研究課題/領域番号 |
23656051
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
池田 和浩 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (70541738)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | スピンフォトニクス / 半導体光デバイス |
研究概要 |
(1) GaAs(110)基板上VCSELの電流注入構造の検討本研究の不揮発光メモリにおいては、電子スピン緩和時間が長いGaAs(110)基板上量子井戸を用いた面発光レーザ(VCSEL)を用いる。まず通常の電極を形成し、スピン偏極していない電流注入によるレーザ発振を実証することで、(110)VCSELの電流注入構造を確立することを目指し研究に取り組んだ。これまで光励起で評価してきたノンドープの(110)VCSELと全く同じ層構造に対してドーピングを施したウエハを成長し、上部のn-DBR層を10um角のメサ構造とする常磁性電極(110)VCSELを作製・評価した。測定した発光スペクトルからは、量子井戸からのブロードなELスペクトルと850 nmにおけるシャープな共振モードが確認できたが、電流値を上げてもこの素子では発振を確認できなかった。断面をSEMで観察したところ、特に上側のn-DBRにおいて多くの欠陥が確認できた。そこで、酸化狭窄を導入し、かつ上側DBRを通さない電流注入構造の検討に着手した。(2) 磁気光学カー効果による磁化測定法の開発本研究では、垂直磁化電極の磁化特性について、振動試料型磁力計を用いて主に評価を行う予定である。しかし、光学的な測定方法である、磁気光学カー効果(MOKE)測定を用いればプローブ光の集光スポットサイズ程度の空間分解能で磁化特性の面内分布や、スピン拡散の測定が可能であり、垂直磁化電極スピンVCSELにおける詳細な評価を行う上で必要なツールとなる。そこで、ポンプ・プローブMOKE測定系を立ち上げ、これまで光励起スピンVCSELやPL評価に使用してきたストリークカメラを用いた時間分解測定系との比較を行った。測定された(110)量子井戸の電子スピン緩和時間は、ストリークカメラによる測定結果と一致し、磁化測定法として機能していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画に従って、常磁性電極による(110)VCSELの作製・評価に取り組み、課題を明らかにした。既に改良に向けた手法に取り組んでいる。平成24年度には円偏光発振を達成できる見込みであり、概ね順調に進んでいる。また、垂直磁化電極の研究に先駆けて、Feショットキー電極の作製・評価手法の確立に取り組んだ結果、Fe電極(110)LEDのEL円偏光度において飽和磁化特性を観測した。垂直磁化電極の形成に向けた実験準備にも取り組み、成長可能な環境を整備した。さらに、磁化特性の新たな評価ツールとしての磁気光学カー効果測定法を立ち上げ、評価法としての機能を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、酸化狭窄を導入した常磁性電極(110)VCSELの電流注入発振を実現する。これと平行して、垂直磁化電極の形成技術の確立に取り組む。垂直磁化電極を用いたLED素子のELの円偏光度を評価し、スピン注入が確認できれば、上記酸化狭窄(110)VCSEL上に当該垂直磁化電極を形成し、スピン偏極電流による円偏光発振の実証に取り組む。また、上述の垂直磁化電極LED素子の電極をサブミクロンに微細加工し、逆バイアス下で円偏光パルスを入射することでスピン偏極光電流を垂直磁化電極に注入する。円偏光パルス強度に対する抵抗の変化を評価することで、スピン注入磁化反転の実証に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に未使用額が生じた要因は、研究の進捗状況に合わせ、消耗品等の予算執行計画を変更したことに伴うものである。平成24年度は、常磁性電極(110)VCSEL、同LEDなどのデバイス作製に必要な半導体材料、金属材料、真空部品、フォトマスク、光学部品などの消耗品や、成果発表に係る学会参加費・旅費などに支出する予定である。
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