(1)GaAs(110)基板上VCSELの電流注入構造の検討 本研究の不揮発光メモリにおいては、電子スピン緩和時間が長いGaAs(110)基板上量子井戸を用いた面発光レーザ(VCSEL)を用いる。スピン偏極電流注入によりGaAs(110)上VCSELの円偏光発振を実現することが応用上重要である。昨年度、常磁性電極を用いてスピン偏極していない電流注入によるレーザ発振に取り組んだが、発振に至らず、デバイス構造の最適化が必要であることが分かった。最終年度は、しきい値を下げるための酸化狭窄構造を導入し、かつ結晶性の低下する上側DBRを通さない電流注入構造を検討した。GaAs(110)基板上に酸化狭窄用のテストウエハを成長し、酸化テストを行った結果、これまで所属研究室で評価してきたGaAs(100)基板上VCSELと同様の酸化狭窄を行えることがわかった。また、欠陥の多くなる上側DBRを通さないで電流を注入するための層構造の検討し、作製プロセスを確立した。 (2)顕微PL法による微小領域における電子スピン緩和時間の評価 本研究では、磁化電極の磁化特性について、振動試料型磁力計を用いて主に評価を行っている。しかし、光学的な測定方法を用いればプローブ光の集光スポットサイズ程度の空間分解能で磁化特性の面内分布や、スピン拡散の測定が可能であり、垂直磁化電極スピンVCSELにおける詳細な評価を行う上で必要なツールとなる。そこで、偏光時間分解顕微PL法を用いて微小領域での電子スピン緩和時間tsを測定し、そのスポットサイズ依存性から本測定法におけるスピン拡散の影響を検討した。測定および解析の結果、励起強度の空間分布に起因する電子スピンの空間分布によってスピン拡散が生じ、受光領域においてスピン偏極度が維持されるように作用することで測定されるtsが長くなることが分かった。
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