研究課題/領域番号 |
23656052
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木村 康之 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00225070)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 液晶 / コロイド粒子 / 光ピンセット / 自己組織化 |
研究概要 |
本研究では、従来の水などの等方的な媒質(溶媒)の代わりに異方性液体である液晶を用い、液晶中のコロイド粒子間に働く長距離かつ異方的な相互作用を利用することにより、コロイド粒子の3次元自己組織構造の作成および制御を目指した基礎的研究を行っている。平成23年度は、このための基礎となる液晶中の粒子間相互作用に関して以下のような新しい知見を得ることに成功した。[1]粒径の異なる粒子間や粒子に付随する欠陥構造が異なる粒子間に働く相互作用を2ビーム光ピンセットにより直接測定するとともに、液晶の弾性理論に基づく理論シミュレーションを行い、その定量的な評価を行った。両方法で得られた粒子間力の粒子距離依存性は定量的に極めてよく一致し、これらの方法が液晶中の粒子間相互作用を解明する有用な方法であることを示すことができた。[2]コロイド粒子の構造体の安定性を定量的に評価するために、多数のコロイド粒子からなる直鎖状クラスターと単独粒子間の相互作用を光ピンセットにより直接測定を行なった。その結果、単独粒子とクラスター間の相互作用はクラスターサイズにほとんど依存せず、粒子間相互作用には重ね合わせが成立しないことがわかった。[3]セルの表面処理を制御して、セル内の液晶に種々の配向状態を実現し、この中で光ピンセットを用いた粒子の2次元構造作成を行なった。ことに、液晶をねじる配向状態にした場合には、粒子の周囲にリング状欠陥を形成する粒子のリングが変形し、粒子にキラリティーを付与できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、まず、液晶中のコロイド粒子間相互作用の定量的評価と評価法の確立を行った。我々の提案した実験、理論的手法が定量的に良い一致を見せ、当該分野の進展に大きく寄与する成果をあげることができたと考えている。これらの成果は、Physical Reviewなどの国際的学術誌に公表済みおよび印刷中である。また、国際シンポジウム等で招待講演を行い、情報発信を行なうことができた。次に、コロイド構造体形成に関する研究に関しては、光ピンセットによる粒子操作により、液晶の配向状態に依存したざまざま構造体を作成した。しかし、これらの方法では精密な構造制御が可能な反面、サイズの大きな構造体の作成には多大な時間を要し、現実的ではないことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、ホログラフィック光ピンセットを用いた多粒子同時操作による、効率的な構造形成とこれまでに成功例のない3次元構造体の構築に取り組む。すでに、水中ではホログラフィック光ピンセットによる粒子の3次元的配置に成功しており、比較的短時間で3次元構造体の形成に成功するものと期待している。次に、相分離や熱泳動効果を用いた自己組織的構造体形成を試み、様々な液晶の配向状態における構造体の効率的構築に関する研究を進めていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、液晶材料、温度調整セル用材料、コロイド粒子、試薬、ガラスセル等の消耗品の購入およびドイツで開催される国際液晶会議での講演および国内の関連学会等での研究発表のための旅費として使用する。
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