1. フェムト秒レーザー光によるコヒーレント分子運動の励起 コヒーレント分子運動による分子光変調を達成するために、分子運動の準位と同等のスペクトル帯域を有する超短パルス光を用いた。昨年度作製した中空微細構造ファイバーに気体分子を高圧力で充填可能なセルに対して、この超短パルス光を効率よくカップリングする光学系を構築した。入射レーザー光の出力が980 mWに対し、中空微細構造ファイバー出射レーザー光出力は144 mWであり、ファイバー入射光に対するファイバー出射光の割合は15 %を達成した。入射光と出射光でのスペクトル形状に関する大きな変化は見られなかったが、現在使用している1 mのファイバーから10 m以上のファイバーを用いことにより、ファイバー中において十分に大きな水素のコヒーレントな分子運動が誘起できると期待される。2.連続発振レーザーによるコヒーレント分子運動のプローブ フェムト秒レーザー光により中空微細構造ファイバー中のコヒーレント分子運動を励起させ、連続発振レーザー光の位相変調を観測した。連続発振光が水素のコヒーレント分子運動により位相変調された場合、水素の回転運動周波数(17.6 THz)だけ変調される。周波数825 nmのレーザー光を変調した場合、短波長側(786 nm)にアンチストークス光、長波長側(866 nm)にストークス光が発生する。今回の実験ではアンチストークス光、ストークス光どちらも確認できなかった。この要因は、発生したサイドバンドの出力がスペクトルメーターの検出感度以下だったことが考えられる。また、①HCP-ファイバーとレーザー光の結合効率を上昇させる、②HCP-ファイバー中に高圧で水素を充填させる、③検出器の感度を上げるという改善を行うことで、サイドバンドの観測が実現できると考えている。
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