研究課題/領域番号 |
23656054
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
白井 智宏 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究グループ長 (20357239)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | コヒーレンス理論 / 強度相関 / ゴーストイメージング / 結像特性 / 位相可視化 / 国際情報交換 / フィンランド |
研究概要 |
1.ゴーストイメージングに関する結像特性の理論解析 古典光を利用したゴーストイメージングの結像特性として、像のコントラストおよび信号対雑音比に及ぼす入射光の偏光状態および高次相関の効果を理論的に解析した。その結果、入射光として完全に偏光している光を利用すると、無偏光の入射光を利用する場合よりも像のコントラストが向上することが明らかとなった。また、参照光を増やし物体光と複数の参照光に基づく高次の強度相関を利用すると、物体光と単一の参照光に基づく2次の強度相関に基づく場合に比べて像のコントラストが向上することが明らかとなった。しかし、像の信号対雑音比については、逆に入射光の偏光度が向上するにしたがい低下することが明らかになった。これらの結果は、光のコヒーレンス理論に基づき全て解析的な表現式として得られていることから、実際にゴーストイメージング光学系を設計し評価する際に重要な役割を果たすことなると思われる。2.位相物体のゴーストイメージング法の考案 ゴーストイメージング光学系の参照光側に空間フィルターを設置し、さらに物体直後にレンズを導入することにより、位相物体を直接可視化する位相コントラスト・ゴーストイメージングが可能となることを理論的に明らかにした。これまでのゴーストイメージングでは、位相物体を直接結像することはできず、回折現象と位相回復計算を利用して間接的に位相物体の情報を取得していた。この新しい手法の考案により、無色透明の細胞をゴーストイメージングの原理に基づき直接可視化することができるようになったため、ゴーストイメージングの生体医用計測分野への応用可能性が大幅に広がったと言える。3.ゴーストイメージングの動作の検証実験 古典光および量子もつれ光を利用したゴーストイメージングの動作について、その検証実験を行う準備を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に計画していた研究実施内容3項目のうち、ゴーストイメージングの結像特性の理論解析と位相物体のゴーストイメージング法の考案の2項目については、ほぼ予定通りの成果を得ることができた。一方、残る1項目である動作の検証実験については、その準備は進めているものの現時点ではまだ公表できる成果は得られていない。ただし、この検証実験については今後の進展の目途がある程度得られており、平成24年度の早い時期には予定していた成果を得ることができると考えている。以上を総合すると、全体的に「研究目的」の達成はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に十分に実施できなかった動作の検証実験については、引き続き平成24年度の前半に実施する。平成24年度に計画している研究実施項目のうち理論的研究については、平成23年度と同様に、アールト大のFriberg教授と共同で推進する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
動作の検証実験に使用する計測装置および光学部品を平成23年度末に購入する予定であったが、検証実験の準備がやや遅れそれらを当該年度中に購入することができなかったため、「次年度使用額」が発生した。平成24年度は、前年度に実施予定であった実験に必要な装置類を購入すると共に、数値計算に必要な計算機用品、書籍、共同研究を実施するためのアールト大への訪問、成果発表と情報収集のための国際会議への参加、論文の投稿などに研究費を使用する予定である。
|