研究課題/領域番号 |
23656057
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 啓司 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00215584)
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キーワード | マイクロマシン / EMSシステム / 微小ポンプ |
研究概要 |
申請者らはこれまで、電磁的な相互作用を用いて微小物体を遠隔で機械操作する要素技術の開発に取り組んできた。本研究は、極微小化が可能な遠隔力学操作方式である電磁スピニング(Electro-Magnetically Spinning、以下EMS)システムを用いて、マイクロ流路ひいてはナノ流路中において重要な機械構成部材となるマイクロポンプ、マイクロバルブ、コックといった要素部品を作り上げるための基盤技術を開発することを目的とする。 本研究の最も大きな特徴は、マイクロマシンの基本駆動原理として、これまでにないまったく新しいEMSシステムを採用する点にある。この方式は構成が非常に簡便であるのに加えて、遠隔からの駆動エネルギー供給が可能であるという際立った特徴を有しており、これゆえ微小化が容易に行なえるというマイクロ・ナノ化学リアクターへの応用上きわめて優れた利点を持つ。本研究で開発する流体駆動のための微小機械要素は、今後バイオエンジニアリングや医療応用など様々な分野への応用が可能であり、その実現のインパクトは大きい。本年度はこれまでの微小球の自転運動に加えて、球のトルクベクトルを3次元的に任意制御し、スピンに加えて転がり自由度を持たせることにより微小球を任意の場所へ配送するシステムを構築した。これにより、例えば球にコーティングした材料などによる微細パターン形成などの可能性が拓かれる。また外部トルクによる転がり運動を精密に計測することにより、これまで物理的な定量測定が困難であった静止および動転がり摩擦の計測が可能になった。これらのシステムを用いて、転がり摩擦の変化から分子の吸着状態を精度よく検出するバイオセンサーの研究に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であった微小ポンプの実証に加え、任意場所への配送駆動など当初の計画にはなかった新たな知見による成果も生まれている。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロマシンの駆動機構としての要素技術に加え、高精度センサーとしての可能性も見いだされたため、これ以降はこの両者について特に実用化の可能性の観点から技術の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
従前の電子部品等の購入に加え、タンパク質を特異吸着するコロイドなど生化学試料の購入に充てる。
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