本研究は、液体薄膜の物性を研究する分野を創生するためにその年弾性を測定する装置を開発することを目的としたものであり、本研究では液膜の形状変形ではなく液膜の載った基板の、共振周波数の変化から粘弾性を測定する手法の開発を目指したものである。 平成23年度は、振動するガラス基板上に付着した微小液滴の振動観察および超高粘性液体の表面物性を絶対評価するための手法の開発を行い、基板上の液体振動モードが液体の表面張力、粘性、および基板との接触角によって決定される理論的見積もりと実験結果が一致することを明らかにし、また、超高粘度の液体でも表面張力と粘性を同時に1分程度で測定する手法の開発に成功した。 平成24年度は、基板上液滴の振動解析を進めるとともに微小液滴の接触角直接観察を行い、不完全ぬれの液滴振動が表面張力を復元力とする固有振動を示し、完全ぬれの液滴の濡れ広がり速度がTanner則に従うことを確認した。また、引き続き超高粘性液体の表面物性絶対評価法開発を進め、昇温により硬化する塗料の表面張力の温度依存性や、逆に昇温により溶融するポリマーの表面張力の温度変化の観察を行い、高粘性液体の表面張力の温度依存性の重要性を確認した。さらに、本評価法による低粘度液体の液滴の定常振動を利用した粘度測定法の開発に着手した。 最終年度である平成25年度に実施した研究は、前年度着手した表面物性絶対評価法による定常振動粘度測定法の開発・評価を進め、液滴の励起振動周波数と粘度の関係を明らかにし低粘度液体でも本手法により粘度測定が可能であることを確認した。また、本年度までの研究成果を研究会等で紹介するなどし、液膜研究の学問分野としての確立を目指した活動を行った。これらの成果は、当初の研究計画を上回るものであり、液体表面の基礎物性を研究することを可能にしたという点で学術界・産業界の発展に大きな意義を持つものである。
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