研究課題/領域番号 |
23656064
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
本田 洋介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (40509783)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 加速器 |
研究概要 |
新たに考案した超小型電子蓄積リングの入射方式について実現可能性を検討している。小型の蓄積リングでは、一般に入射が困難である。パルス駆動のキッカーシステムでは、その立ち上がり立ち下がり時間で制限されるため多数のバンチを入射出来ないことと、単一回の入射方式では電子源の強度でリングのビーム電流が制限されてしまう。本方式では、入射ビームは周回ビームにたいして低エネルギーで行い、そのエネルギー差を利用して静磁場による入射合流が可能である。このため、リングの全バケットに電子を入れることができる。また、多数回の積み上げ入射が出来るため、低電流の電子源でも、リングに大電流を周回させることが出来る。非相対論領域の低エネルギービームを入射し、加速空洞で周回のエネルギーまで加速するが、速度が遅いために加速中の位相がずれる効果によって、エネルギーおよびタイミングが周回ビームと同条件になり、そのまま蓄積される。この条件を位相空間で議論した結果、位相空間の保存則から、原理的に同一条件には成らないことが明らかになった。入射ビームをできるだけ周回ビームの安定条件に近づけることはできるが、必ずその外側に位置してしまい、有限の周回の後にはビームは失われてしまう。なんとか安定条件にするためには、何らかの冷却過程が無ければならない。今のシステムでは通常の放射冷却は有効ではないが、多数回の入射ビームが局在化していることから、確率冷却が働く可能性があると検討しており、原理を成立させる条件を再考している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、まず原理を成立させる条件を探し出すことであった。いくつかの計算機シミュレーションを行ったが、入射ビームが安定に周回する条件が発見できず、原理を再検討した。位相空間の保存則のため、入射ビームは必ず安定領域の外側に位置してしまうことに気付き、この原理を成立させるには散逸過程、あるいは冷却効果が必須であると認識した。本方式の場合に適した冷却効果について検討しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
本方式では冷却方式が原理を成立させるために重要であることが分かり、特に確率冷却の方式が良く適合すると検討している。これには広帯域のビームモニタとフィードバックシステムが必要である。現実的な装置性能を仮定して、フィードバックシステムを含んだシミュレーションを行い、入射ビームを不安定領域から安定領域に移動させ、保持することが可能かどうか見極める。
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次年度の研究費の使用計画 |
具体的な詳細計算に進む前の段階で原理の見直しを行っているため、当初計画した本年度の計算機環境の整備は次年度に延期することになった。このため、相当する研究費を次年度に持ち越した。ビームシミュレーションだけでなく装置設計も含めた加速器全般の広い範囲の情報の収集が必要である。加速器関係の国際会議に参加する旅費を計上する。情報を集めるとともに、本研究について発表、議論する。装置の製作は行わないが、計算機環境を整備する。
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