テーブルトップサイズまで小型化した電子蓄積リング型加速器は、様々な応用が考えられる。小型であるが故に、困難になる点の一つは、リング軌道へのビームの入射方式である。パルスキッカーによらずに静磁場で入射することができれば、多ターンでの積み上げ入射が可能になり、電子源の性能や入射効率に依存せずに、ビームを蓄積することができるようになる。 非相対論的な低エネルギーであることから、加速空洞において位相のシフトが生じるが、これを利用して入射を行う方式を提案した。低い加速勾配の加速空洞をリング中に配置する構成で、周回中の電子と入射時の電子では加速空洞通過時に位相がシフトした結果、その出口において同じタイミングに到達する条件が可能である。 このまま多数回の周回を継続することが出来れば良いが、実は位相空間の保存則を考えると明らかであるが、エネルギーと加速位相の位相空間において、リングの安定軌道と入射軌道が完全に重なり合うことは無い。つまり、入射ビームは何周回かした後に必ず軌道から外れてしまう。このことを解決するには、何らかの減衰効果を積極的に利用する必要がある。低エネルギーであるために放射減衰の効果は無いので、例えば、確率冷却を併用した方法が考えられる。縦方向キッカー、あるいは、縦横の位相空間の混合と併用した横方向キッカー、によるフィードバックの導入が検討された。 システムとして成立させようとすると複雑化し、当初の特長であった小型化と両立させることは困難であるとの結論に至ったが、アイデア自体は、電子ビームに限らずに、イオン加速器などの場合も検討できると思われる。
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