研究課題
本研究の目的は、「スペーステラヘルツ天文学」という新たな観測領域を切り拓くべく、超伝導トンネル接合素子(STJ)の新しい作製法を用いて究極感度の検出デバイス実現へ向けた技術的基礎を築くことにあった。具体的には、従来の多結晶成膜法(スパッタ法)に代わり、単結晶成膜法(分子線エピタキシー法)を導入し、原子層レベルで平坦なトンネルバリア界面を形成することで超低雑音特性(=低い漏れ電流特性)をもつAl系STJ素子の作製技術を検討した。まず、Al単層膜の成膜時にはAl2O3(0001)とSi(111)の2種の基板を用い、特にSi基板では表面の酸化膜を除去するために成膜前に700℃で10分間の熱洗浄を施した。その後、室温~300℃の様々な温度条件下、1080℃に加熱したクヌーセンセルを用いて各60分間(約100nm厚)成膜し、反射高速電子線回折(RHEED)や原子間力顕微鏡等を用いて薄膜の結晶性と平坦性を多角的に評価した。その結果、平坦性と結晶性の両立の観点から成膜時の基板温度は約100℃が適していることが分かった。次に、3層膜の成膜時にはAl2O3(0001)基板上にAl/MgO/Al (=50/1.5/25 nm)の3層構造を採用した。その結果、MgO成膜後の表面粗さは1.0 nmという高い平坦性を示し、MgOがトンネルバリア材料として適していることが分かった。さらに、各層成膜後にRHEED像を取得することにより3層全てがエピタキシャル成長したことを確認した。最後に、上記3層膜をSTJ素子に加工し0.3Kに冷却して電流電圧特性を評価した。その結果、STJ素子の臨界電流密度は15.5~117 A/cm2、素子品質の指標の一つであるRsg/Rnは4.0~60.2であり、従来のスパッタ法に比べて素子特性のばらつきは見られるものの、良好な特性を有する3層エピタキシャルSTJ素子を実現した。
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Extended Abstract of 11th International Symposium on High Temperature Superconductors in High Frequency Fields (HTSHFF2012)
巻: 1 ページ: pp.44-45
Proceedings of 23rd International Symposium on Space Terahertz Technology (ISSTT2012)
巻: 1 ページ: P-46_1-3