研究課題/領域番号 |
23656066
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研究機関 | (財)神奈川科学技術アカデミー |
研究代表者 |
酒井 宗寿 (財)神奈川科学技術アカデミー, 重点研究室 光触媒グループ, 研究員 (00392928)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | エレクトロウェッティング / マイクロバブル / 撥水 / 多孔体 |
研究概要 |
エレクトロウエッティング現象(EW現象)を用いて、マイクロバブルを形成するにあたり、以下の4点の課題(1:気体供給の部位の構造と素材の検討、2:印加電圧と気体流量の最適化、3:マイクロバブルの評価方法、4:多孔質ポリマーを用いた、複数のマイクロバブル作製方法の検討)を2年の研究期間で検討している。 平成23年度は、EW現象を用いた際のマイクロバブルの作製において、一つのマイクロバブルを形成することを通して最適条件を探索した。まず、EW現象による微細なマイクロバブルの形成に最適な気体供給部位(ノズル)の条件探索のため、各種撥水性表面に水滴を設置し、電圧印加による濡れ性変化(ラプラス圧変化)の連続応答性から検討を開始した。その際、誘電率と表面エネルギーが低いPTFE表面では電界による接触角変化が大きくなり、表面粗さが付与された超撥水性表面(接触角:150°以上)は変化の幅がさらに大きい。しかしながら、超撥水性表面は、一定以上の電圧が付与されるとCassieモードからWenzelモードへの転換が見られ、電圧印加前後の接触角の連続応答性が乏しい。一方、表面粗さが付与されないPTFE表面(接触角:115°)では、電圧印加時の接触角変化自体は20°未満であるが、EW現象の連続応答性を有する。従って、気体供給部位の製作方針は、EW現象の繰り返し可逆性が大きいPTFE表面を、電極の役割も果たす金属ノズルの上面に設置することとした。 PTFEコートされたSUS針(内径:数100μm)と水槽内の水の間に高圧電源装置を用いて数百~数千Vの電圧を印加し、気泡形成のための最適な電界強度と気体流量の検討を行った。各流量における「適当な電位を印加した場合の気泡の直径」は、「水の表面張力とノズル径で決定される気泡の直径」と比較すると、より微少な気泡を形成することが可能になりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、EW現象を用いた際のマイクロバブルの作製において、一つのマイクロ バブルを形成することを通して最適条件を検討することにあった。まず、研究計画書にあるようにPTFEを用いること自体は想定していたが、EW現象を用いたマイクロバブル形成に対して、表面微細構造の有無が優位性を有するかどうかについては不透明であった。PTFEを用いた各種撥水性表面を用いた基礎的実験の積み重ねにより、微細構造を有さない表面(超撥水性表面ではない)が望ましく、最も重要な気体供給部位の設計指針が得られた。この知見に基づき、PTFEコートされたSUS針に高圧電源装置から電圧印加を行い、気泡の最小化に最適な電界強度(EW現象によるラプラス圧変化の強度)と気体流量の検討まで、順調に到達した。各気泡サイズに対して、「設定電位までの到達時間」「パルスの周期」「電圧印加のタイミング」など、電界の付与方法も最適化されつつあり、全般的におおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年に行った基礎的知見の成果をもとに、複数のマイクロバブルを発生させるデバイス設計・試作を行い、性能評価を行う。まず、多孔質ポリマー(気孔の直径:数100nm~数100μm程度の範囲で制御可能)を用いたマイクロバブル作製方法の検討に取り組む。気体を送り込む多孔質ポリマーを絶縁体として用い、適宜電極を設置し、複数のマイクロバブルを形成させるデバイスの試作を試みる。研究計画書上では、多孔体ポリマーは市販品を使用する予定であったが、研究室内で作製することを可能にした。それ故、多孔体の素材とサイズ・表面改質法・電極の配置等の気体供給部位構造の設計方針に生じた"研究上の柔軟性"を最大限に活用し、さらに研究を加速させていく。多孔質ポリマーを絶縁性単体や導電/絶縁性を付与するレイヤー構造にすることで、電圧印加によるマイクロバブル形成時の制御性の向上を図る。 最終目標であるマイクロバブルのサイズ分布の制御には、各種の多孔体ポリマー(気孔サイズ、電極の配置、導電性)・気体の流量・電圧・電圧パルスを条件最適化することから、複数のマイクロバブルの発生させる際の制御方法を確立する。同時に、多孔体ポリマーの物性と機能(気孔サイズ・低誘電率・導電性レイヤーの設置・EW現象の連続応答性)に関する基礎的知見の取得も行う。マイクロバブルのサイズ分布は、液中に形成されたマイクロバブルを撮像して画像解析することで、"気泡サイズ分布"を取得し、デバイスの性能を評価する。 また、本研究申請のマイクロバブル形成方法はEW現象(電気的に気液界面に圧力変動を供給する方法)を用いることから、マイクロバブルのサイズ制御が容易になり、その発生機構もコンパクトになる特徴を有する。それ故、液体の流路を有するマイクロデバイス等に実装させるために、現状の気体供給部位をマイクロ流路に配置することも試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
電材や配管・電極類は、研究期間を通してチューニングしており、22年度に引き続き、研究経費を計上している。当初予定では、多孔質モノリスポリマーは市販品の購入を想定していたが、研究室内での製作が可能になった。それ故、多孔質モノリス構造体を作製する際の試薬等の消耗品に使用する。
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