エレクトロウエッティング現象(EW現象)を用いて、マイクロバブルを形成するにあたり、以下の4点の課題(1:気体供給の部位の構造と素材の検討、2:印加電圧と気体流量の最適化、3:マイクロバブルの評価方法、4:多孔質ポリマーを用いた、複数のマイクロバブル作製方法の検討)を2年の研究期間で検討した。 EW現象を用いた際のマイクロバブルの作製において、一つのマイクロバブルを形成することを通して最適条件を探索した。まず、EW現象による微細なマイクロバブルの形成に最適な気体供給部位(ノズル)の条件探索のため、各種撥水性表面に水滴を設置し、電圧印加による濡れ性変化(ラプラス圧変化)の連続応答性から検討をした。その際、誘電率と表面エネルギーが低いPTFE表面では電界による接触角変化が大きくなり、表面粗さが付与された超撥水性表面(接触角:150°以上)は変化の幅がさらに大きい。しかしながら、超撥水性表面は、一定以上の電圧が付与されるとCassieモードからWenzelモードへの転換が見られ、電圧印加前後の接触角の連続応答性が乏しい。一方、表面粗さが付与されないPTFE表面(接触角:115°)では、電圧印加時の接触角変化自体は20°未満であるが、EW現象の連続応答性を有する。 この知見に従い、PTFEコートされたSUS針(内径:数百μm)と水槽内の水の間に高圧電源装置を用いて数百~数千Vの電圧を印加し、気泡形成のための最適な電界強度と気体流量の最適化を行い、より微少な気泡を形成することが可能になりつつある。さらに、マイクロスケールの貫通孔を有する多孔体を用いた場合は、誘電率が高いPTFE粒子を含有させたモノリス構造体を用いたほうが制御性がよい。ただし、バブルのサイズをより均一化にするには、気泡が生成される細孔のサイズ分布も重要であり、これらのことは今後の課題である。
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