研究課題/領域番号 |
23656071
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中谷 彰宏 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50252606)
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キーワード | 計算力学 / 変形体力学 / 不安定現象 / 連続体力学 / シミュレーション |
研究概要 |
変形体の非弾性特性をマクロ変数が規定された状態で多数の局所安定なミクロ状態をとりうる多重安定系の状態間遷移によって記述する新しい連続体力学理論を確立する。とくに、背景に隠れた系としての多重安定状態の時間発展を陽に記述する定式化を行うことによって、現象論的支配方程式の素過程からの導出や、マルチスケール理論における粗視化の新しい方法論に結びつく知見を得ることを目的として研究を行っている。平成24年度の主な成果は以下のとおりである。 1.テンセグリティ構造に対して複数の安定状態が存在することを見出し、そのエネルギーを評価した。さらにこの多重安定テンセグリティ構造に対して状態遷移間の最小エネルギー経路をNEB法や節点拘束法により評価することができた。 2.微視的内部構造と巨視的物体形状というスケールの異なるパラメーターによって規定される物体の弾塑性有限要素解析を行い、局所的不安定変形と大域的不安定変形との間の遷移のメカニズムを明らかにした。 3.固体表面の曲率とその変化を利用した水滴の安定性の向上や輸送の駆動力の発生に関する検討を行った。表面張力、界面エネルギー、物体力等の力学・幾何学要素を考慮した支配方程式から水滴の形状決定と安定性解析を行った。 以上の成果から、負荷を受けた構造の状態遷移機構を解明するとともに、微視的構造の不安定性が巨視的な特性に与える影響する系の特徴を明らかにことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
様々な系に現れる不安定現象についてその普遍性を議論することができた。特に前年度に行った理論の定式化を基礎にシミュレーションを実行し、テンセグリティ構造に複数の安定状態を取りうることを明らかにできた。さらに、現実の状態遷移を考えるためにはさらに部材の干渉を考慮することが必要になるが、状態遷移における最小エネルギー経路に加えて、自由度を拘束することによって、当初想定していなかった状態変化の過程が存在することを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
多重安定テンセグリティ構造を有する構造体に対して、平成24年度に行った局所安定間の遷移解析の結果などをもとに検討を進める。特に形状記憶効果に注目し狭窄部を通過する際の形状変化を考える。接触を考慮した定式化を行い、速やかに変形シミュレーションを実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行し、一部の解析モデルの検討や理論研究を先行して実施したため、当初の見込み額と執行額は異なったが、全体を通じた研究計画に変更や遅延はなく、前年度の研究費も含め、当初予定どおりの計画を進めていく。
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