変形体の非弾性特性をマクロ変数が規定された状態で多数の局所安定なミクロ状態をとりうる多重安定系の状態間遷移によって記述する新しい連続体力学理論を確立する。とくに、背景に隠れた系としての多重安定状態の時間発展を陽に記述する定式化を行うことによって、現象論的支配方程式の素過程からの導出や、マルチスケール理論における粗視化の新しい方法論に結びつく知見を得ることを目的として研究を行った。平成25年度の主な成果は以下のとおりである。 1.狭窄部を通過するテンセグリティ構造に対して変形とひずみエネルギーの変化を調べた。拘束条件を考慮したエネルギー最小化による評価と、粘弾性系の運動方程式を用いた時間発展シミュレーションを実施し、状態遷移の非凸性に由来する変形メカニズムの違いが現れることを明らかにした。 2.フェーズフィールド法を用いて微細な表面構造を有する固体と液体との接触現象に関する研究を行った。具体的には周期境界条件を用いた系を用いて、球面の固体に強制変位に対する水面の形状と系のエネルギー変化を評価した。得られた解析結果から水面に浮く固体の安定性について明らかにした。 3.微細な離散構造を有する表面の摺動摩擦特性解析を実施し、ミクロな摩擦則がマクロな摩擦則に与える影響について検討を行い、ミクロ構造の離散性・階層性がマクロな摩擦則に与える影響を明らかにした。 以上の成果から、負荷を受けた構造の状態遷移機構を解明するとともに、微視的構造の不安定性が巨視的な特性に与える影響する系の特徴を明らかにすることができた。
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