研究課題/領域番号 |
23656079
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 千明 東京工業大学, 精密工学研究所, 准教授 (80235366)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 接着 |
研究概要 |
今年度は,異種金属を通電解体性接着剤で接合した場合の基本的特性と剥離メカニズムについて実験的に調べた.すなわち,起電力,接着剤への通電特性,および剥離性に及ぼす金属材料の影響を,各種の実験により明らかにした. 具体的には,各種金属(鋼,アルミ合金,銅合金,ステンレス,およびチタン合金など)の被着体を用意し,これを通電解体性接着剤で接合し,その起電力や,電流量の変化,および残存強度の変化などを,各種温度・湿度で調べた.その際,電気的特性を,安定した各種の温度・湿度条件で計測するため,今年度に購入した恒温恒湿槽を用いた. この結果,通電に対する接着強度の低減率は,被着材料の種類にあまり依存しないこと,並びに強度のバラつきは鋼で最も小さく,一方銅合金では,非常に不安定な接合強度しか得られないことが明らかとなった.さらに,単位接合面を通過する電荷総量が強度低下率に大きな影響を与えていること,並びに異なる印過電圧でも,この強度低下の傾向が変化しないことを明らかにした.これは任意の通電状態に対する強度低下率の予測法を確立したこと他ならない. 本年度は,さらに本通電解体性接着剤を用いた簡易な分離機構を試作し,その特性を実験的に確認した.本機構の動作は時限剥離ラミネートを開発する上で試金石となるが,実験で予測通りの挙動を示し,解体予測時間近傍で自発的な分離解体が見られた.以上の結果から,時限剥離ラミネートの実現可能性が確かめられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた基礎実験はほぼ完了し,通電解体性接着剤の剥離特性が把握できた.次のステップは時限剥離ラミネートの試作であるが,現在はこの準備段階にあり,通電解体性接着剤の均一な塗布技術,ならびにラミネートの制作技術に対して検討を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
24年度以降は,予定通り時限剥離ラミネートを試作する.また,通電パスの設計手法についても検討を行う.通電パスにある種の工夫,たとえば通電解体性接着剤の局部的な剥離により,通電パスの抵抗値が低減できれば,強度低下特性は,長時間側でより急峻となり,実用上有利となる.本研究では,このような通電パスの構造についても,検討を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は,化学薬品を扱う研究であり,材料代や各種薬品,並びに化学消耗品が必要とである.また,試験治具など,機械部品等が必要となる.この他,国際学会への参加費用も必要となる.次年度の研究費は主にこれらの経費として使用する予定である.
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