研究課題/領域番号 |
23656081
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鳴海 敬倫 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20143753)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 液晶 / ER効果 / 構造制御 / ソフトマター / 対流 / 法線応力 |
研究概要 |
本年度は基礎段階として,スメクティック液晶の対流状態から形成される構造の基礎的物性の測定と構造自体の可視化実験を行った.まず,ガラス電極による円板を作製し,下部プレートもガラス電極に変更して,レオメータを改造した.また,そのレオメータにはガラス面の温度調整機構と撮影装置を取り付け,対流状態からの冷却時の構造変化を観察し,また法線力(法線応力)の変化を同時測定した.その結果,冷却時の構造変化は明確ではなかったが,転位温度に到達する前から法線応力が高くなり,転位温度付近で一時的にさらに高い法線応力が発生することが明らかになった.その後は一定の法線応力を生じたが,最終的に形成される構造での法線応力にはばらつきが見られた.この冷却後に形成される構造のその他の機械的強度と,また微小変形後の機械的強度の変化についても検討を加えた.そして,形成される構造の動的粘弾性測定による貯蔵粘弾性特性もばらつくが,その値の高低と法線応力の高低の間には,ある程度負の相関があることが分かった.また,微小変形を加えることにより,法線応力が上がる傾向があることを明らかにした.そして,強度のばらつきについて,液晶の構造変化を詳細に調べ,測定用円板の外周部で発生する液晶構造が比較的均一である場合に,構造強度が高いことを明らかにした.以上のように,スメクティック液晶の対流状態から発生する構造の力学的特性が明らかになってきており,その構造制御により力学的特性の制御も可能であることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スメクティック液晶の構造とその強度に関しては有効なデータを得ることが出来たが,その特性について系統的に詳細な測定が必要であったため,当初予定していた分割電極を用いる実験までには進めなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,分割電極を用いたスメクティック液晶の構造制御とその力学的特性の制御に関する実験を行う.また,変形可能な電極を用いて,積層構造を有する複合粘弾性体を作製し,その力学特性の制御性を明らかにする実験を行う.具体的にはパターニングを施した透明電極シートを設計・作製し,まず,シート二枚,液晶が一層の構造を作製する.前年と同様にシート間の液晶を構造化し,シートを変形させたときの変形特性と可視化特性の変化を検討する.シート面の詳細な変形状態を解析するために,レーザ変位計を用いて,変形分布を測定する.また,印加した圧縮力などはロードセルを用いて測定する.そして,各種パターン,配向処理,温度,電場印加方法による強度特性への影響を解明し,変形状態と可視化映像の対応関係を明らかにする.上記の実験後には除荷,さらに温度を上げて液晶をネマティック相の状態に戻して,シートの弾性による全体の構造復帰を生じさせる.その際に,印加電場を調整し,さらに再度冷却して,液晶を元の構造へ再生する実験を行う.そして,可視化画像から,その再生状況を調べる.さらに,構造復帰時に電場印加方法および温度場の制御方法を変えて,新たな構造の形成実験を行う.これらを総合して,本研究で試作した新規組織の機能性表皮組織としての応用性を総括し,これらの結果を,国内の学会およびレオロジーに関する国際会議で発表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は,上記の実験で用いるレーザー変位計や画像処理装置に用いる.また,液晶の購入費,温度制御機構の改善のための装置などに用いる.
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