本年度は,スメクティック液晶の対流状態から形成される構造制御のために,表面配向処理の効果について検討した。PVA膜による電極面の配向制御を行い,その有効性を確認した。この配向制御により,液晶全体の内部構造に影響を与えることによる構造強度の安定性向上を目指した実験を行い,これまでの配向処理されていない場合との違いを明らかにした。しかし,強度に関する十分な安定性を得るには,配向処理だけでは十分でないことも明らかになり,さらなる構造制御法の開発が必要であるという結論を得た。その一つとして,対流で形成された構造に変形を加えることにより,構造強度が安定する結果を得た。初期構造の降伏値に高低がある場合でも,10ひずみ程度の変形を加えることで同じ降伏値に収束し,またそのひずみ量の大小により,構造強度を制御出来ることも解明した。その構造変化も可視化し,フォーカルコニックドメインと考えられる構造が発達していることを明らかにした。 さらに,この研究と併せて,研究課題の変形強度を調整・再生できる知能化粘弾性組織として,分散系流体についても研究を展開し,同様の構造制御でソフトマターとしての変形性が制御出来ることを明らかにした。具体的には,流動方向などを途中で変化させる実験を行い,この流動履歴を制御することにより,構造強度の強弱を制御できる結果を得た。特に,流動反転により,分散構造が一時的に流動性を増し,構造強度を弱くできる現象について,体積分率,分散媒の物性などを変化させた場合を系統的に明らかにした。その結果を,国際会議でも発表した。そして,この材料も研究課題の主題である知能化粘弾性組織となることを明らかにし,研究の方向性も拡張した。
|