研究課題/領域番号 |
23656082
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北條 正樹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70252492)
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研究分担者 |
井上 康博 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (80442929)
西川 雅章 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60512085)
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キーワード | ソフトアクティブマテリアル / 複合材料 / 分子力学 / ガラス転移過程 |
研究概要 |
本研究では,ソフトアクティブマテリアル(Soft Active Materials, SAM)を繊維と複合化するソフトアクティブ複合材料の創成を目的とする.特に,これらポリマー材料の変形の原理である相転移とその空間的な分布構造を分子レベルで把握することにより,変形機能の物理的基礎をマルチフィジックスの立場から検討した. 1. 形状記憶ポリマーフィルムを対象とし,ガラス転移温度以上でのアニーリングによる寸法変化効果と,熱力学的負荷サイクルによる形状回復効果について詳細に検討した.その結果,寸法変化をもたらす両者の要因は本質的に同じメカニズムと実験的に確認され,負荷量と温度履歴の制御による内部ひずみ制御の可能性が示唆された. 2. 蛍光分光法により,形状記憶ポリマーフィルムの内部構造変化と機能特性の劣化挙動の関係について定量的に評価した.その結果,ポリマー内部構造変化に起因して蛍光浸透量に変化が見られ,形状記憶特性の変化と良い相関を示した.つまり,熱力学的負荷サイクル下での機能特性変化の支配的な要因は,ポリマー内部の自由体積変化であると示唆された. 3. 本研究の総括として,ソフトアクティブマテリアルの機能特性発現は,そのガラス転移過程近傍の変形挙動の特徴にあるが,上記の通り,ポリマー内部の自由体積変化に密接に関係していることが実験的に検証された.また,ポリマーの自由体積変化は分子運動性変化の指標とも言えるので,分子力学モデルを用いた緩和時間を指標とした評価方法により,定性的傾向としてガラス転移過程に対する複合化の効果について理論的な検討を行うことは有効であることが分かった.これにより,ポリマー内部のひずみや複合化の効果を把握しながら,機能特性の制御へ活用するための実験的・理論的手法を構築した.
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