研究課題/領域番号 |
23656084
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
嶋田 隆広 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20534259)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | ナノ構造体 / 破壊クライテリオン / マルチフィジックス / 分子動力学 / 第一原理解析 / 機能不安定クライテリオン / 強誘電体 / 磁性体 |
研究概要 |
近年では原子レベルで形状を付与した構造体が注目を集めている。これらの原子構造体は個々の原子の離散性に起因した特有の変形・破壊挙動を示すため、もはや従来の連続体近似に基づく破壊力学概念を適用することは不可能である。一方、ナノ構造体では精緻な原子配列によって機能を引き出している場合が多く、構造のみならず機能を含めた破壊を考えることが必要不可欠である。ところが、構造・機能の両側面から破壊を記述する統一的なクライテリオンは提案されていない。本研究では原子構造体の力学的・機能的破壊を支配する解析的クライテリオンを創出することを主目的とする。 平成23年度は、まず、(1)外力ならびに外部電場による仕事を含めた原子系の全エネルギーに対する自由度に関する二階微分から成るヘッセ行列Hの定式化に成功し、その固有値の正値性から対象とする系の機能的・力学的な不安定性を厳密に評価するクライテリオンを開発した。(2)開発した機能的・力学的破壊クライテリオン評価のための並列計算環境を構築した。(3)開発したクライテリオンを外部電場負荷下の強誘電体に適用し、ドメインスイッチング発生の臨界状態を厳密に記述できることを実証した。本成果は既に査読付論文として掲載されているほか、学術英文図書「Fracture Nanomechanics」に本研究に関する節を設けており、掲載されている。 さらに、より複雑かつ困難な、外部磁場条件下における原子構造・磁気的破壊クライテリオンの開発にも、既に成功している(平成24年度実施予定(1))。加えて、開発した手法のプログラムを作成し、並列計算機に実装した。本手法を、外部磁場下での強磁性体の磁化反転現象に適用し、その臨界条件・不安定モードを厳密に評価できることを実証している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度実施計画していた、(1)外部電場下での機能的・構造的破壊クライテリオンの開発、(2)特殊並列計算環境の構築、(3)クライテリオンの妥当性の実証、を達成している。それらの成果は既に学会でも発表を行っているほか、査読付学術論文として掲載されていることからも本成果に対する高い評価が伺える。また、学術英文図書「Fracture Nanomechanics」に本研究に関する節を設け、成果を掲載している。 さらに、平成24年度実施予定であった、(1)磁場負荷条件下における機能破壊クライテリオンの開発、(2)同磁場下におけるクライテリオンの実証、を達成しており、一部の成果は学会で発表済みである。また、英文国際誌に投稿するため、成果を執筆している。 以上のように、研究は当初の計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の実施計画は、(1)磁場負荷条件下における機能破壊クライテリオンの開発、(2)同磁場下におけるクライテリオンの実証、(3)ナノ構造体への適用、である。上記項目「現在までの達成度」で述べたように、既に(1)(2)項目については達成済みである。項目(3)については実施プログラムやモデル構築などの準備が既に完了しており、平成24年度予定している並列計算機の増設を待つばかりとなっている。ナノ構造体は複雑かつ解析実施困難なものが多く、本研究では近年特に注目を集める、ナノドットや基板上のモノレイヤなどの挑戦的な対象について解析を実施する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度構築した並列計算装置を増設する(物品費)。これにより、さらに大規模かつ複雑なナノ構造体の機能的・構造的な破壊問題にアプローチすることが可能となる。また得られた成果を国内外での学会にて発表し、情報収集を行うため、旅費を計上している。
|